産経新聞大阪版『複眼鏡』1月24日夕刊に掲載されていた記事の手持ちWORD原稿バージョンです。入稿した後に人質事件が発生、人質交換交渉中と言われていた段階でゲラを見ていましたが、軽々に結果を予期した加筆はもちろんできず、掲載時に事件はまだ未解決だったのですが、それに殆ど言及してない内容に違和感を持った読者も多かったのではと思います。事件がああしたかたちに至った時点では、さて、どのように読めるもの…
投稿者: 武田 徹
武田徹(たけだとおる) 東京都出身。国際基督教大学教養学部人文科学科、同大学大学院比較文化研究科修了。ジャーナリスト・評論家・専修大学文学部教授など。 著書に『流行人類学クロニクル』(日経BP社。サントリー学芸賞受賞)、『産業の礎―ルポ日本の素材産業』(新宿書房)、『偽満州国論』(河出書房新社→中公文庫)、『隔離という病』(講談社メチエ→中公文庫)、『核論』(勁草書房→中公文庫→『私たちはこうして原発大国を選んだ』と改題して中公新書ラクレ)、『戦争報道』(ちくま新書)、『NHK問題』(ちくま新書→amazonKndleでセルフパブリッシング)、『殺して忘れる社会』(河出書房新社)、『暴力的風景論』(新潮社)、『日本語とジャーナリズム』(晶文社)、『日本のノンフィクション史』(中公新書)などがある。 法政大学社会学部、東京都立大学法学部、国際基督教大学教養学部、明治大学情報コミュニケーション学部、専修大学文学部などで非常勤・兼任講師を務める。東京大学先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大学人文学部、人間社会学部教授を経て2017年4月より専修大学文学部人文ジャーナリズム学科教授。グッドデザイン賞審査委員、BPO放送と人権委員会委員なども歴任した。
To go, or not to go
シリア内で取材をさせる報道機関とさせない報道機関にわかれたことについて東京新聞に求められたコメントの補足。Facebookに2月3日に書いたら一定程度の反響があったのでここにも再掲しておきます。 **** 取材しなければ分からない事実があることは全くその通りだし、報道が知らせる事実に公益性が備わりうることも確か。その意味で危険な地域に乗り込んで取材する記者の存在は極めて貴重である。 しかし、その一…
寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか
2007年秋に大学礼拝で話した話の口述用原稿です。某宗教団体系サークルが学園祭に出展しようとして大学側に拒絶されていたのを見るに見かねて顧問役を買って出た経験を語っています。「寛容は~」は本文中にあるように渡辺一夫のエッセーの言葉。これを再掲したのはもちろんシャルリーエブドの事件に接して。この礼拝で話した内容をもう一度、2015年の時制で書き直したいと思っているので、オリジナルを載せてみました。 …
日本版ウィキリークスを巡って
産経新聞逢坂版10月28日に掲載された記事の元原稿です。 ***** ITやネットワーク社会の最新動向の研究・紹介者として知られる八田真行・駿河台大講師が17日、日本記者クラブで講演。内部告発サイト「ウィキリークス」の日本版を12月に開設する計画を明らかにしたという。 政府、企業等の機密情報を暴露するウィキリークスの日本版と呼ばれる内部告発サイトがこのタイミングで開設されると聞くと、それを標的に…
「ヒロシマ61年 原爆から科学技術教育を」
2006年の8月6日、つまり61年目の原爆記念日に毎日新聞に掲載された記事の生原稿。「アウシュビッツの後に詩を作ることは野蛮だと言ったのはアドルノだが、ヒロシマの後に脳天気に科学を語ったり、礼賛するのもまた野蛮だろう」の一節は科学技術社会学周辺でプチ流行語となったようだが、結局は科学批判を我流の科学信仰を持って行う域に留まった印象がある。そのまま311を経過して御用批判の大合唱もあったが、皮肉に…
新刊『デジタル日本語論』刊行のお知らせ
ジャストシステムから刊行されていた雑誌『ジャストモアイ』に一九九四年五月号から一九九五年六月号までに連載した原稿を加筆修正し、一九九五年に同じくジャストシステムより『メディアとしてのワープロ——電子化された日本語がもたらしたもの』と題した著書をだしました。 当時のジャストシステムは、日本語ワープロ「一太郎」の製造元として一世を風靡しており、日本語関係書籍を活発に刊行してもいました。刊行リストに…
美味しんぼ騒動について
美味しんぼ騒動についてはラジオ出演に始まって何回かコメントした。これは産経新聞連載『複眼鏡』への寄稿生原稿。これが自分としては決定稿になるのか、と感じている。社会は「わかってきたこと」を共有しつつ設計、運用されるしかない。しかし「わからなかい」ことを「なかった」ことにせず対応できる余地を制度的に残しておく。それがとりあえずの暫定的結論なのか。 ****** 筆者も311後に何度か鼻血を出した。と…
人は誰もが同じ風景をみているわけではない。
新潮社の読書誌『波』に書いた新著の自著解説です。新著と合わせて読んでもらいたい内容ですので、早めに公開します。本来であれば『波』の発売期間の終わりを待つべきですが、出版社側としてはこの自著解説が広く読まれ、そこから更に本自体に関心を持つ人が増えることをなにより望んでいるはずなので、ナマ原稿を上げておきます。 ***** 風光明媚な観光地に行けば、皆がビューポイントに立って同じように満足気な表情を…
ガレキとラジオと演出の問題
産経新聞大阪版『複眼鏡』2014年3月25日に掲載された記事のナマ原稿です。朝日新聞が報道(毎日なども追随して報道)したヤラセ問題を扱ったものですが、この寄稿文が掲載された後、演出を強いられたと朝日が報道した出演者がその事実はなかったと抗議したという報道もあり、続報に注目していましたが、報道は私の知る限り途絶えています。 ****** 3月11日が近づくにつれメディアでは東日本大震災関係ものが…
常温核融合とSTAP細胞
2014年4月22日に産経新聞大阪版「複眼鏡」に寄稿した記事のナマ原稿です。 **** 小保方晴子氏の記者会見が催された9日、中継映像を見ながら、その前日に掲載された新聞記事ことを思っていた。それはSTAP細胞とは別の科学技術についてのものだった。 「放射性廃棄物の無害化に道? 三菱重、実用研究へ」。そう題された日経新聞記事は、極薄のパラジウムと酸化カルシウムを重ねた膜に何らかの物質を付着させ、膜…