Kindle Direct Publishingで『NHK問題』を復刊しました。amazonの紹介文を再掲してみます。 ****** ■『NHK問題 二〇一四年・増補改訂版』刊行に寄せて 本書は2006年に筑摩書房より刊行した『NHK問題』を増補改訂した電子書籍である。 これまで筆者は、『偽満州国論』、『隔離という病』(共に中公文庫)、『核論』(中公新書ラクレ『私たちはこうして「原発大国」を選…
投稿者: 武田 徹
武田徹(たけだとおる) 東京都出身。国際基督教大学教養学部人文科学科、同大学大学院比較文化研究科修了。ジャーナリスト・評論家・専修大学文学部教授など。 著書に『流行人類学クロニクル』(日経BP社。サントリー学芸賞受賞)、『産業の礎―ルポ日本の素材産業』(新宿書房)、『偽満州国論』(河出書房新社→中公文庫)、『隔離という病』(講談社メチエ→中公文庫)、『核論』(勁草書房→中公文庫→『私たちはこうして原発大国を選んだ』と改題して中公新書ラクレ)、『戦争報道』(ちくま新書)、『NHK問題』(ちくま新書→amazonKndleでセルフパブリッシング)、『殺して忘れる社会』(河出書房新社)、『暴力的風景論』(新潮社)、『日本語とジャーナリズム』(晶文社)、『日本のノンフィクション史』(中公新書)などがある。 法政大学社会学部、東京都立大学法学部、国際基督教大学教養学部、明治大学情報コミュニケーション学部、専修大学文学部などで非常勤・兼任講師を務める。東京大学先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大学人文学部、人間社会学部教授を経て2017年4月より専修大学文学部人文ジャーナリズム学科教授。グッドデザイン賞審査委員、BPO放送と人権委員会委員なども歴任した。
偶然を讃えよ(2013年11月8日大学礼拝感話)
小熊英二さんの書いた『1968』という本を授業に使ったことがあります。60年代末に始まる学生運動を取り上げたこの本の表紙には、ヘルメット姿の女子学生の写真が使われています。この68年当時の女子大生の姿をみて、今の学生諸君は本当に驚きます。それもそうでしょう。今の学生はヘルメットなんかかぶらない。せっかくきれいなブロンドに染めたのにヘルメットなんかかぶったら台無しになる。ですので自分と同年代の女子…
夢をたたむ勇気を与える五輪に
毎日新聞大阪版10月31日夕刊に寄稿した2020年五輪の原稿です。 大阪版だけの掲載でデジタル版もないようなのであげておきます。 福島第一原発の汚染水漏れは止まらない。五輪招致のプレゼンで安倍晋三首相が述べた「アンダーコントロール」の言葉が虚しく響く。しかし五輪と原発の因縁は、実は今に始まったものではない。 戦後の高度経済成長は池田勇人政権が東海道の太平洋側地帯に重工業用地を求める方針を打ち出…
大学入試は今や何のためにあるのか
政府の教育再生実行会議が、大学入試を「人物本位」にするため、全大学共通の「新テスト」を創設し、その成績を何段階かにランクづけして、2次試験ではペーパー試験以外の方法――小論文、面接などで選抜する「入試改革」を目指していると報じられている。 ソーシャルメディアなどを見ていると、これに対する反発の声が思いのほか強い。面接のように評価軸が明解ではない選抜方式では価値観がそこに紛れ込みやすいという問題…
64年東京五輪ポスター
2020年五輪の記事を書くので、文庫になっていた野地秩嘉『TOKYOオリンピック物語』を読んでみた。 そこでスタートダッシュする選手を写した有名なポスター(たとえばこんなサイトで見られます→http://plginrt-project.com/adb/?p=20406 第二号ポスターと書かれている方)の撮影状況が再現されている。早崎治は都内にある大型ストロボを総ざらい集めて20基の同時発光で選手…
ハンセン病療養所と「赤ちゃんポスト」
産経新聞大阪版「複眼鏡」に書いた記事の元原稿です。2013年夏休みの収穫。 ****** 夏休みが少しだけ取れたので、熊本に出かけた。ぜひ見ておきたものがあったのだ。 待労院という私立のハンセン病療養所が熊本にあった。歴史は古く、一八九六年に熊本を訪れたカトリック司祭ジャン・マリー・コールが、加藤清正を祀る本妙寺の境内に発病によって故郷に住めなくなったハンセン病者が集まっているのを見て、その保…
武田徹@journalism.jp 2013-09-16 14:59:27
『中央公論』9月号に寄稿した時評の元原稿です。雑誌の発売期間が終了したので掲げておきます。 スタジオ・ジブリの新作映画『風立ちぬ』を観た。零戦の設計者・堀越二郎に小説家・堀辰雄を重ねて…といった内容は既に周知のことだろうから省く。ここではこの映画に込められた宮崎の意志と思想に注目してみたい。 「戦闘機が大好きで、戦争が大嫌い。宮崎駿は矛盾の人である」。鈴木敏夫プロデューサーは映画のパンフレットに…
歴史を現在に更新するための観光
Facebookに投降したものと同じ内容です。 ***** 『思想地図β4-1 チェルノブイリ、ダークツアーガイド』読了。書店では品切れが多くて手に入れられなかったのだが、版元から御恵投いただいて早めに読めた。感謝。 「観光」をキーワードにするという話を前に聞い時に思いだしたのは、かなり離れた文脈ではあるが、かつてのSONYのAIBOだった。その開発にあたって天外伺郎なるペンネームで神秘主義的な著…
「なんとなく原発大国への道」
ハフィントンポストの参院選特集の中の一本として執筆。 ******** 原発問題は、参院選では特に争点となって盛り上がらないまま、再稼働に向けて大きく舵を切るという「最悪」の結果になりそうだ。 実はこの道はいつか来た道なのだ。先月に刊行した拙著『原発論議はなぜ不毛なのか』(中央公論新社)で、脱原発運動が実を結ばないのは、それが「選択できない」からだと書いた。拙著の中では二又に分かれる山道の比喩…
再帰的デザインへの道を開く ―― デザインあ展
デザインにはうるさい、筆者はそんな自負がある。普段の服装を見ている周囲の人がそれに同意してくれるかは大いに疑問だが、その問題は追々解決してゆくとして、デザインにうるさいつもりの筆者としては見逃せない展覧会が「デザインあ」展だ。 NHK・ETVで放送中の同名番組から派生した展覧会で、大学で教えているメディアアートに興味がありそうな学生にも勧めて来た。だが自分自身が観に行けたのは実は最終日。何度か…