読売新聞連載『論壇キーワード』2020年4月27日掲載用の生原稿です。 5年間、主に国内を担当して今回が最終回。読売の担当記者と校閲のレベルの高さにいつも助けられてきました。というわけで生原稿はちょっとアブナイかも。 最終回は読売の社論である憲法に緊急事態条項をという主張と必ずしも適合するわけではないので難しいかなと思いましたが、無事掲載してもらえた。主体的な「個」の確立と、信頼できる政府の両立…Read more →
カテゴリー: 武田徹@journalism.jp
人工知能と教養
月刊文藝春秋2018年10月号掲載「新書時評」生原稿。 ****** AVと聞いてアダルトビデオしか連想できないようではアウトである。今やAVといえば自動運転車(Autonomous Vehicle)だ。 冷泉彰彦『自動運転「戦場」ルポ』朝日新書はIT企業やベンチャーも加わって展開されている熾烈なAV開発競争の最新報告。事故を起こすと人命に関わる自動車を自動運転する難しさを丁寧な取材で浮き彫り…
総覧系新書にみる意味とイメージの伝播
月刊文藝春秋2018年12月号掲載「新書時評」生原稿。NHK出版の担当者の方からお礼とともに「まさかマンチンと並ぶとは」とのお言葉をいただきました。 ********* 松本修『全国マン・チン分布考』インターナショナル新書の冒頭で紹介されるのは、二三年前にテレビ番組『探偵ナイトスクープ』宛に寄せられたハガキのエピソードだ。 当書主は当時二四歳。東京在住の彼女が京都の実家から送ってもらった饅頭を…
平成の三冊
月刊文藝春秋2019年1月号掲載「平成の三冊」生原稿です。他のメディアでも書いていますがそれぞれ違うのを選んでいるので、本当に本当の三冊を選ぶとしたらと聞かれそうですが、これは割と本音に近いセレクション。 ****** 人文、社会科学、文学の領域でそれぞれ個人的に印象に残っている三冊を選んでみた。 まず人文書では東浩紀『存在論的、郵便的』新潮社を挙げたい。著者は昭和末のニューアカブーム以来、沈…
給食時間が怖かったことから始まる「食」論
月刊文藝春秋2019年1月号掲載「新書時評」 ********** 食べることを楽しめない。それはきっと小学校時代の給食のせいだ。好き嫌いは特になかったが、自分には量が多すぎた。担任教師は完食するまで席を立たせなかったので、どうすれば食パン4枚を時間内に食べ切るか、事前に配られる献立表を見ながら作戦を練りに練った。そんな記憶が半世紀経ってなお生々しいのは、それだけ辛かったのだろう。 しかし今回…
「一生困ったことがない人なんていないし、一生困っている人を助けるだけの人だっていない。それが〈平等〉ということ」
月刊文藝春秋2019年3月号掲載「新書時評」生原稿です。認知症フォビアから始まって社会の”最大公約数”としての障害いついて。 ******** 何か失敗すると「自分もついに認知症かも」と口走る中高年が多い。それは認知症への不安の裏返しだ。その不安は、ガンや成人病に対するものとは違って、症状だけに留まらず社会的存在としての自分が失われ、意図せずに長く辛い介護を周囲に求めてしまうことへの恐怖に由来す…
平成の終わりに新書を三冊を選べば
月刊文藝春秋2019年4月号掲載「新種時評」生原稿です。 *********** いよいよ幕引きが近づき、平成を回顧する記事や番組が増えている。ここでは新書らしい視野の広がりで平成という時代を省みる機会を与えてくれそうな三冊を選んでみた。 小川原正道『小泉信三』中公新書は皇太子時代の今上天皇の教育常時参与を務めた経済学者の評伝だ。小泉は慶応義塾の塾頭として最愛の息子を含む多くの学生を戦地に送っ…
ガンダムって団塊文学だったって知ってた?
月刊文藝春秋2019年5月号掲載「新書時評」生原稿です。ネット化されていないようなので校正前のものを上げておきます。 ****** 4月といえば入学式。中でも”最高峰”東京大学に集った新入生は晴れやかな思いでいよう。だが、50年前のキャンパス風景は全く違っていたはずだ。学生運動の影響で東大入試の中止が決まり、新入生がいなかったからだ。 東大闘争とは何だったのか。学生として渦中で経験した富田武は『…
改元と日本辺境論
月刊文藝春秋2019年6月号掲載「新書時評」の生原稿です。前任校でお世話になった澤井啓一先生の訓読論に影響を受けて書いています。論文の抜き刷りを頂いたのが懐かしい。 ********** 日本オリジナルか、中国の古典がルーツなのかーー。新元号発表後に起こった論争は日本が中国文化の影響圏内にあった歴史を改めて思い起こさせた。 漢文明の周辺に位置していた経緯は朝鮮半島の国々も同じ。であれば仲睦まじく…
平成の終わりと令和の始まりの日本社会論
月刊文芸春秋連載「新書時評」2019年7月号掲載分の生原稿です。文春オンラインがスタートした直後はコンテンツ不足だったのかネット版になっていたけれど最近は電子化されていないようなのでこちらで生原稿を挙げておきます。古市『平成くん、さようなら』は大塚の紹介で知って読んだけれど面白かった。 ******** 改元フィーバーから少し時が経って冷静に振り返る余裕も出てきた頃か。そのタイミングでお勧めした…