調べ物をしていて過去の月刊『現代』の記事を読みたくなった。『現代』なら合本化されて大学図書館の書庫にあるので時間効率的にとても助かる。 同じことがネット記事ではできない。過去記事のアーカイブが案外とあっさり消えてしまうし、そうなるともう探しようもない。 図書館が雑誌を収蔵していた延長上にネット記事のアーカイブを保存する方法が確立され、印刷メディアの収集保存とシームレスに接続されないものか。Cini…
カテゴリー: 武田徹@journalism.jp
殺して、忘れる社会
10月5日夜、「メディア分析ラボ」にお呼ばれされて中沢明子さん、新雅史さんと話してきた。 そこで話した内容が「忘却」をテーマとしており、私の登壇者紹介にも『殺して、忘れて社会』が含まれていたので、改めて自著を読み返してみた。そして、その序文に書かれた内容はーーアメリカ社会についてはトランプ大統領登場後に通用するか疑問もあるが、日本に関しては今のほうが時代にあっている感覚を強く持った。アマゾンで…
もはやブロッキングしかない?社会の現状
『新潮45』10月号に「もはやブロッキングしかないネット界の現状」と題して寄稿した記事の生原稿です。期せずして『新潮45』最終号に載ることになりました。 ネットの普及による「内」「外」の浸潤を指摘していますが、それはネットを越えて社会にも及んでいたのではないか。言論とと言論以前のもの、接続合理性による動機づけなど、ネットだけでなく、現実社会を説明することも出来る内容だったのかなと今回の騒動を前に…
「美しい顔」再論
産経新聞大阪版7月23日夕刊に掲載された「複眼鏡」。新聞紙上では分量がきびしくて割愛した部分を復元してあります。 第159回芥川賞は高橋弘希氏の『送り火』に決定した。おそらく注目度ではそれを上回っていた北条裕子氏の『美しい顔』は賞を逃した。 注目を集めたのには理由がある。『美しい顔』は芥川賞に先駆けて第61回群像新人文学賞を受賞し、若い女性新人作家の鮮烈なデビューを印象づけていた。だが、しばらく…
存在しない神に祈る
1月12日の大学礼拝を担当しました。口頭では色々余計な言葉を挟んでいますが、元になったは以下のような原稿でした。 ******* 2018年1月12日の大学礼拝を始めます。 賛美歌21 575「球根の中には」をご一緒に賛美したいと思います。 差し支えのない方はご起立ください。 ***** ご着席ください。 聖書をお読みします。今日の聖書箇所は新約聖書ヨハネ黙示録22章17節から21節までです。新約…
対話することがまず難しい
読売新聞2016年12月の論壇キーワードの入稿前の生原稿です。大塚英志さんの『感情化する社会』にインスパイアされています。だいぶゲラで手を入れたような気がするのですが…。 ***** 権威あるオックスフォード英語辞典(OED)を出版するオックスフォード大学出版局は、その年を象徴する言葉を毎年選んでいる。2016年は、客観的な真実が蔑ろにされ始めた状況を示すPost-truth(ポスト真実)の語を…
排除を巡って
読売新聞「論壇キーワード」10月掲載分生原稿 衆院選での「希望の党」のまさかの失速。その原因が、政策的に相容れない民進党議員は「排除」すると述べた小池百合子都知事の一言にあったことは衆目の一致するところだろう。 なぜ「排除」の語はここまで強い影響力を持ったのかーー。 排除の例として思い浮かぶもののひとつに、たとえばハンセン病患者たちへの過去の隔離措置がある。発病が発覚し、社会から強制的に排除された…
流域思考とは
読売新聞論壇キーワード8月掲載分生原稿 地球温暖化が原因の異常気象なのか、今夏も集中豪雨が多発した。堤防の決壊で家屋が流されたり、土砂崩れで交通機関が寸断されたりしている。 水害が続く中で改めて注目すべき考え方がある。岸由二・慶応大学名誉教授が提唱する「流域思考」だ。 私たちは場所を説明する時に行政上の区分に基づく住所名を用いるのが一般的だ。それに対して岸氏は、その場所が「流域」に属するかを重…
「心」の存在を忖度するだけではすまなくなってきた
産経新聞「複眼鏡」11月掲載分生原稿 映画『ブレードランナー2049』が公開中だ。1982年に作られた『ブレードランナー』の続編となるが、両者の間には科学技術の大きな進化が横たわっている。 最初の『ブレードランナー』では原作のフィリップ・K・ディックのSF作品で使われていた「アンドロイド(人型ロボット)」の語を「レプリカント」と呼び直し、「人間の」という意味を強く持たせた。その時点でレプリカント…
デジタル時代の写真らしさを巡って
産経新聞「複眼鏡」10月掲載分生原稿 フランスでコマーシャル写真のモデルがデジタル処理によって実際よりも痩せて見るように加工された場合、Photographie retouchée(画像はレタッチによる編集済)の表示が義務づけられた。この義務を怠った場合は約500万円の罰金か広告制作費の30%の罰則金が課されると報じられている。 こうした厳しい措置の背景には「痩せすぎ」に対する社会的な懸念がある…