有毒廃棄物で揺れるコートジボワール(3)

--- 2006年10月18日

 表題の事件について、イギリスのBBCの素晴らしいところは、その背景を深く掘り下げる記事もきっちりと載せていることである。この今年9月7日付の解説記事によると、インドや南アフリカ、中国でも類似の問題が生じているらしい。船舶解体が第三世界に押しつけられて、しかも労働者に健康被害をもたらしていることは初耳である。

 また、パソコンに含まれている有毒物質を具体的に図解することによって、読者の想像力を刺激しているところも、ジャーナリズムとして、やるべきことをしっかりやっていると評価できるだろう。せひリンクをクリックして見てほしい。「E-west」という言葉もあるらしい。
 以下、ご参考までに。06.10.18

汚染のグローバルな経路 The global path of pollution
分析
リチャード・ブラック
BBCニュース・ウェブサイト環境特派員

3人が死に、さらに1500人が医療処置を受け、そして1つの政府が倒れる。象牙海岸の有毒廃棄物問題が衝撃をもたらしている。

 この事件をめぐる状況は、廃棄物自体の性質さえも不明瞭であり、汚職の疑惑がある。
 そしてその廃棄物を運んだ船を所有していた「トラフィギュラ・ビーエBV」社は、「その残留物(汚水)はガソリンと水、腐食性洗浄剤の混合物である」ことを確認したという声明を発表した一方で、アビジャン〔コートジボワールの首都〕からの報道は、その中身として、悪名高い化学物質である硫化水素や有機塩化物に言及している。
 はっきりしていることは、この事件が廃棄物----とくに海外からの廃棄物----の問題を突如、壮大で、おそらく前例のないやり方で、西アフリカの〔人々の〕意識に投げ入れたということだ。
 しかし廃棄物は諸刃の剣である。とりわけ開発途上国にとっては。不適切に扱われれば、はっきりとした危険を示すものもあるが、ビジネス・チャンスをもたらしうるものでもあるのだ。
 ヨハネスブルグへの訪問では、私は、巨大な廃棄物の山に登った。その頂上でホームレス生活している人々と話すために、である。
 ボロボロのハンカチを顔から外すと、彼らは私に、自分たちはバッグ1つあたり5ランド〔南アフリカ共和国の通貨単位〕を稼ぐためにアルミニウムを集めている、と教えてくれた。5ランドは1USドルにもならない。
 それが、よいものではないが、彼らが見つけることのできた最良の生活である。

2つの牽引力

 この分裂の国際的側面を、インドの船舶解体ビジネスほどよく示しているものはない。
 その西海岸では、世界の不要な貨物船や大型客船が壊されるために到着し、分解され、処分されている。それは重要なビジネスであり、地元の雇用の供給源である。
 しかし労働者たちは、健康においてその対価を払っているのだろう。最近のある政府委託の報告は、アランAlang造船所では、労働者6人のうち1人が、アスベスト中毒の徴候を持っていることを明らかにした。
 現在把握できているところでは、フランスの大型客船「ブルー・レディ号」を壊す契約がある。環境保護グループが、フランスの航空母艦の、目前に迫った到着に対する、2月の積極行動-----最終的には、その巨大船がフランスに戻るのを見た行動----に呼応して、抗議している。
 もちろんインドは「開発途上国」という呼称に値する。実際には開発途上ではないのに、習慣的にそのラベルを与えられている国に含まれている多くの国とは違う。いまでは、この奇妙で重要な契約に先んずる余裕を持つことができる国のことだ。
 国民所得や生活水準が上がるにつれて、環境への意識が一般的に広がり、そして生活賃金への道筋が広がる。
 西側の環境団体の懸念は、インドが船を追い払えば、それらはもっと貧しい海岸に行き着くことである。それはおそらくアフリカで、そこでは規制が緩く、監視が欠如し、そして雇用の需要が大きいのだ。

グローバルなゴミ箱

 理論的には、こうしたことは何も起こるはずがない。「有害廃棄物の越境移動とその処理に関するバーゼル条約」とそれから派生した諸条約は、それを防ぐと考えられている。
 西側の市民たちは自分たちのかぐわしい土壌の上での廃棄物処理工場に反対するだろうし、西側の企業はクリーンな浄化のためのコストすべてを消費者に課すよりも、ゴミを輸出することを好むだろう。つまりバーゼル〔条約〕は、貧しい国が世界のゴミ箱になるのを防ぐための、理論的な柵なのだ。
 しかしこのバーゼル条約の構造の一部は、自分たちの廃棄物を「どこかほかの場所」に持ち込むことに関心を持っている国々からは、その署名の10年後においても、批准されていないままである。そのため環境保護団体はとくにオーストラリアやアメリカを批判している。
 そして船の積み荷はこの条約によってカヴァーされている一方で、船自身はカヴァーされていない。
 機能している条約においてさえ、保護は保証されているとは言い難い。
 腐敗があり、法執行のコストがあり、政治的意志の欠如があり、楽して儲ける機会がある。
 2年前、「BBCワールドサービス」の環境ドキュメンタリーをつくったとき、私は偽物のオンライン上でのアイデンティティをつくり、恥知らずのヨーロッパ人コンピュータ・ビジネスマンとして振る舞った。私はバーゼルの制度の厄介さを避けて、有毒物質を含む古い設備を輸出しようとした。
 交渉は順調に進み、2つの会社----どちらもアメリカに本社を置き、東アジアで操業している----は、コンピュータ部品のコンテナを隠したまま香港に運ぶ準備をした。
 バーゼル会議の参加者としては、中国は、適切な書類なく、そのようなものを港に入れることを許されていない。しかしどちらの会社も、吟味されることなく、ものを税関を通過させる「やり方ways」を自分たちは持っている、と言った。
 追跡の結果、中国の村に行き着いた。そこでは西側では考えられない技術を使ってコンピュータが分解されていた。環境保護団体「バーゼル・アクション・ネットワークBasel Action Network」は、沸騰している酸でいっぱいのナベの中で処理されるサーキット・ボードを撮影した。
 健康や地域の環境へのインパクトは考慮されていない。しかし村人にとっては、それはいまでは生活なのだ。

負担の軽減

 長期的に見れば、バーゼルのような国際条約は、成功させるためには強大な能力と意志を必要とする。
 おそらく、財物から有毒物質をできるだけ取り除くためにもっと効果的なことは、西側ではアスベストに起きてきて、そしてゆっくりとコンピュータで起きていることだ。
 そして効果的な国内法の整備と施行のために、開発途上国の基準を上げるには、市民社会の監視が基準になる。
 そのときこそ、ある人の廃棄物がほかの誰かの有毒な収入源となることをやめ、私たちが象牙海岸で目撃しているような事件は考えられないものとなるだろう。

有害廃棄物
1.ブラウン管やはんだにおける鉛
2.古いブラウン管における砒素
3.電力供給整流装置としてのサーキット・ボード(回路基盤)におけるセレニウム
4.プラスチックのケースやケーブル、サーキット・ボードにおけるポリ臭化難燃剤
5.難燃剤としての三酸化アンチモン
6.サーキット・ボードや半導体におけるカドミウム
7.金属のさび止めとしてのクロム
8.金属の骨組みや磁気性のためのコバルト
9.スイッチや筐体における水銀

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