次々登場する「倫理的な幹細胞」!?
--- 2007年01月27日
英語圏では、「倫理的な幹細胞ethical stem cell」という言葉が、1つのキーワードになっているようだ。
先日、アメリカの研究者が胚から取り出した割球からES細胞株を樹立したと発表したことや、スペインの研究者が「死んだ」とみなされる胚からES細胞株を樹立したと発表したこと、それらへの反応などを紹介したが、「倫理的な幹細胞」と呼ばれるものは、そのほかにも考え出されている。
羊水中の細胞や、動物の除核卵にヒト体細胞を核移植してできる「ハイブリッド・クローン胚」から幹細胞株を樹立することを計画している研究者もいるようだ。
また、そうした研究の目的が、いわゆる再生医療だけでないことも、そろそろ見え始めてきたようだ。この件については、いずれ深く論じたい。
赤ちゃんといっしょにやってくる「倫理的な」幹細胞
'Ethical' stem cells that arrive with baby2007年1月7日 18時
ニューサイエンティスト・ドットコム・ニュースサービス
アンディ・コグラン子宮の中で赤ちゃんの周りにある羊水中に、多用途の幹細胞が見つかったことによって、すべての母親が、赤ちゃんのための“予備(スペア)”としての細胞を保存することができるようになるかもしれない。もしその子どもが組織や細胞の損傷を被ったときには、その細胞は完璧な移植片へと再生、成長することができ、その免疫系による組織拒絶の問題もない。
あるいは、その細胞は公的な組織バンクで、たくさんの赤ちゃんからいっせいに蓄積され、その結果、「出来合いのoff-the-peg」組織がほとんどすべての患者のそれとマッチされられるようになるかもしれない。
医師らは、胎児検診〔出生前検診prenatal testing〕のときに子宮から吸い出した羊水からも、あるいは、女性が出産したときに直接的に胎盤からも、その細胞を抽出できるだろう。その細胞は液体窒素のなかで蓄積され、その赤ちゃんの人生の残りのために保存される。
少なくとも、このことは理論になっている。いま、この新しい研究は初めて、羊水由来幹(AFS)細胞が抽出され、そしてさまざまな種類の組織に変容しうることを示している。
「私たちは、この細胞が神経細胞や血液、肝細胞、軟骨、骨、心筋に成長しうることを示してきました」と、その細胞を単離し、検査したチームのリーダーで、アメリカのノースカロライナ州ウィンストン・セーレムにあるウェイクフォレスト医科大学のアンソニー・アタラは言う。折衷案
アタラは、AFS細胞は、胚性幹細胞〔ES細胞〕と体性幹細胞とのあいだの“折衷案halfway houses”である、と言う。胚性幹細胞は、身体にある細胞すべてを形成する力を持ち、胚にある未発達の細胞であり、体性幹細胞は、身体のあちこちに分散しており、生存中、組織を活性化させ、修理する細胞である。「AFC細胞は両方の特徴を持っています」とアタラは言う。
AFS細胞は、ES細胞が多くの細胞へと成長するように、ほとんどの細胞へと成長することに加えて、早く成長する。36時間以内に2倍になるのだ。同じく希望を持てることに、羊膜(羊水)の幹細胞からつくった神経細胞は、マウスの脳にみごとに融合した。このことは、それらがヒトの組織を修理できることをも示唆する。
ES細胞とは違って、AFC細胞は腫瘍を形成しない。ES細胞が、そのプロセスで滅失することになる、予備のヒト胚から抽出されなければならないことに対して、羊膜細胞の保存にはどんな倫理的問題もない。このES細胞の手順は、いくつかの団体からの感情的な反対を引き起こしている。
アタラは、このことが羊膜(羊水)細胞を倫理的により受け入れやすいものにしているかどうかについてはコメントしていない。しかし彼は、自分の見解では、幹細胞研究の手段すべてが追求され続けるべきだ、と強調した。ハイブリッド・クローン
ほかの研究者たちはこの知見を歓迎している。「もしこの細胞が胎盤から抽出されうるのならば、それは、すべての種類の細胞を修理する大量の細胞株を得るのに便利な方法です」と、イギリスのエジンバラ大学のイアン・ウィルムットは言う。
イギリスのニューカッスルアポンタイン大学のライル・アームストロングはこう言う。「こうした方法で得られる細胞から治療が登場するかもしれません。ES細胞よりも前に」
しかしながら彼らは、ES細胞はそのほかの応用にとって貴重なものであろう、と主張する。とりわけ疾患を理解したり、新しい医薬品を検査する研究に、と。ウィルムットやアームストロング、そしてイギリスのロンドンにあるキングス・カレッジのステファン・ミンガーが率いる第3のチームはそれぞれ、「ウシ-ヒト」もしくは「ウサギ-ヒト」のハイブリッド・クローン胚からヒトES細胞をつくり出そうと試みる許可を申請している。
彼らの計画は、ES細胞が抽出され、疾患の原因を解明する研究をできるよう、ヒト細胞を胚様の状態embryonic stateへと誘導するために、染色体を取り除かれた動物の卵子を用いるものである。
今週、イギリスの「ヒトの受精および胚研究認可局〔HFEA〕」は、この3チームがその研究手段を進めることが許されるかどうか判断を下すことになる。この継続的な問題についての、最新の「ショート・シャープ・サイエンスShort Sharp Science」ブログを参照し、あなたの見解を寄せてください。Journal reference: Nature Biotechnology (DOI: 10.1038/nbt1274)
記事参照:『ネイチャー・バイオテクノロジー』 (DOI: 10.1038/nbt1274)〔関連記事、外部サイトへのリンクは省略〕
以上、取り急ぎ、ご参考までに。07.1.27

