ジャーナリストの「反SLAPPモデル」

--- 2007年02月18日

「SLAPP」について調べていたら、アメリカには、「職業ジャーナリスト協会Society of Professional Journalists」という団体があることが偶然わかった。

 公式サイトによると、同団体は「アメリカで最も広い基盤をもつジャーナリズム組織」で、1909年にその前身団体が設立されており、1万人の会員を抱えているという。その活動は広範囲に渡り、非常に興味深いのだが、「情報の自由Freedom of Infomation」というコーナーに「反SLAPPモデル 公衆の関与に対する戦略的訴訟を制限する統一法:その可決を」という文書がまとめられている。
 取り急ぎ、その導入部分と、SLAPPについての基本的な解説の部分を仮訳する。例によって、専門用語にも文法にも自信がないので、あくまでご参考前に。また、僕が省略している部分にも重要なことが書かれているので、できる限り原文を参照してほしい。07.2.18
 

情報の自由
FREEDOM OF IMFORMATION
反SLAPPモデル
Anti-SLAPP Model

公衆の関与に対する戦略的訴訟を制限する統一法:その可決を
Uniform Act Limiting Strategic Litigation Against Public Participation: Getting It Passed

職業ジャーナリスト協会

ベイカー、ホルステトラー LLP

 最初の反SLAPP法がワシントン州で可決されてから15年が過ぎ、2004年春現在、21州が、なんらかの種類の反SLAPP法制度を配備している。こうした事実は私たちを利すると同時に、隠しもする。というのは、私たちは私たちの「模範法Model Act」を世界に披露しているからだ。私たちは、そうした法律の起草や可決における、ほかの人々の経験から学ぶことができる。その一方で、法制度の反対者らは、そうした法律の、いわば「濫用」を強調するための用意をするだろう----それらには、彼らの見解においては、名誉毀損訴訟をたたかうために反SLAPPの申し立てを使う巨大メディア事業体も含まれるかもしれない。
 後者のポイントを踏まえると、ジャーナリズムのコミュニティはその役割を、反SLAPP法制度の将来の制定を求めることにおいて、役割を担うものとして、思慮深くみなすことが重要である。間違いなく、メディア事業体やプレス組織は、そうした法律の、余裕のある、そして尊敬を受ける擁護者として、その法制度の認知と支持を得るために、人々や政府に対するその影響力を使うべきである。しかしながら、メディアを利する反SLAPP法の、数え切れないほどの例がもたらされることが可能なあいだには、そうした組織は、法制度における個々の利益を控え目に見積もり、概して、「ちっぽけな野郎little guy」、そして「修正第1項First Amendment」を力づけることに、その能力を集中させる必要がある。
 私たちは自分たちの目的と役割を心得て維持すると同時に、私たちはまた、そうしたヒントから利益を得ることができる。そうしたヒントとは、カリフォルニア反SLAPPプロジェクトのマーク・ゴールドウィッツ所長や、カリフォルニア新聞発行者協会のトム・ニュートン相談役らが提案してきたものだ。

〔中略〕

付録A
SLAPPs:その問題の言明

SLAPP訴訟とは何か?

 SLAPP訴訟の本質は、都市計画の建築規制や環境保護、学校のカリキュラム、消費者保護といったローカルな問題を含む、公的政策をめぐる議論を、私的な論争へと転換させることである。SLAPP訴訟は政治的論争を法廷へと持ち込む。法廷では、その問題について発言する側が彼または彼女の行動を擁護しなければならない。SLAPP訴訟は、数多くの異なる文脈において登場しているようだが、それらはいくつかの特徴を共有している。

1.訴えられた標的targetsの行為は、一般的に、憲法で守られている言論であり、公的な関心のある問題についての見解を述べることを意図するものである。ほとんどのケースにおいて、SLAPP訴訟は、政治的論争における人々の関与に対する報復として提訴される。その原告は、政治的敵対者を脅すことを試み、可能であるならば、人や組織による、その問題への人々のさらなる関与を妨げる。

2.典型的な標的は、一定の重要性のある社会的もしくは政治的関心を述べている、そして、個人的な関心や商業的利益のために活動しているのではない、個人や団体である。

3.提訴者は、自分たちの現在もしくは将来の商業的利益がその標的の行動によって否定的に影響を受けるかもしれないと思っている個人や団体である。開発業者やそのほかの商業事業体が、ほとんどに共通するSPAPPの原告であるが、彼らだけが唯一のそれではない。たとえば、オクラホマでは、不法行為の改革を支持する団体が、法廷弁護士たちによって提訴された集団代表名誉毀損訴訟の対象になった。またカリフォルニアでは、郡当局が、地元のある市民に対して、4200万ドルのSLAPPを提訴した。彼は焼却炉プロジェクトの提案に反対していたからである。

4.その訴訟は、以下のような、1つかそれ以上の不法行為にもとづく傾向がある。すなわち、名誉毀損(中傷、悪口)、ビジネス上の不法行為(契約やビジネス関係、経済的便宜への干渉、すなわち取引の制限)、行為の不適切使用(行為の濫用、すなわち悪意訴追)、市民権の侵害(正当な法手続き、取得、すなわち平等の保護)、そして以上のような行為への1つかそれ以上の関与への共謀である。

5.求められる損害はしばしば数百万ドルにもなる。「デンヴァー政治法制度プロジェクトDenver Political Litigation Project」の調査によると、要求額の平均は、910万ドルだった。ペネロープ・カナンとジョージ・プリングの『SLAPPs:発言への訴訟217 SLAPPs: Getting Sued for Speaking Out 217』(フィラデルフィア、テンプル大学出版、1996)を参照のこと。

6.ほとんどすべてのSLAPP訴訟は、実際には却下されるか、もしくは被告に有利な判決を下されている。カナンとプリングは、およそ3分の2の訴訟において、標的は、ごく初期の予審法廷の状況において、却下を勝ち取っている。Id. at 218.〔意味不明〕。諸説を総合すると、SLAPP訴訟の数はこの30年間で増えている。この国〔アメリカ合州国〕のSLAPP訴訟は、以下のような内容を示している。

----ロードアイランドでは、ある女性が、地下水の基準の提案をめぐり、地元の埋め立て地からの汚染の可能性について懸念を表明する意見を述べた。その埋め立て地の操業者らは、彼女を、名誉毀損と、将来のビジネス契約に干渉する不法行為で訴え、補償と懲罰的損害賠償の両方を求めた。

----ペンシルバニアでは、ある夫婦が、合州国上院議員や州の保健当局、CBSニュースに、地元の高齢者福祉施設の状態について不平を述べる手紙を書いた。州は調査を行ない、その結果、福祉施設の認可を取り消した。すると、その福祉施設はその夫婦と上院議員、州の保健当局部を訴えた。

----ミネソタでは、引退した合州国魚類野生動物庁の従業員が、自分の近所の人々を、ある小さな湖でのコンドミニアム開発の提案に反対するよう促した。再区分の要求が拒絶された後、開発業者は彼を訴え、彼が虚偽の申し立てを行ない、ビジネス上の評判を害した、と主張した。

----テキサスでは、病いのため自宅に閉じこもっている女性が、近所の埋め立て地に対して、公的に発言した。それに対して埋め立て地のオーナーらは、彼女と彼女の夫に対して500万ドルの名誉毀損訴訟を起こした。

----カリフォルニアでは、小規模の綿農家の団体が、同国で最も大きな綿農業企業から支持されている投票法案の提案proposed ballot measureに反対する新聞広告を買い取った。同企業はその農家たちを名誉毀損で訴え、その損害について250万ドルを要求した。

----カリフォルニアでは、6300万ドルの訴訟が、ある開発業者によって起こされた。その業者は、「ビバリーヒルズ女性有権者連盟Beverly Hills League of Women Voters」が自分たちの10エーカーのプロジェクトを妨害した、と主張した。

----ワシントンでは、「自然保護Nature Conservancy」が、海草類の養殖開発業者によって、2790万ドルで訴えられた。同団体が、サンファン郡における潜在的な野性地域を登録し、そこが保全されるべき土地であると認め、郡に対して調査を検討するよう勧告した後のことである。

〔後略〕(粥川準二仮訳)

« 「SLAPP」としてのオリコン訴訟 | トップページ | カリフォルニアの「反SLAPP法」 »