遠隔嘘発見器----いつ、どこで、そして誰に?

--- 2008年05月31日

 みなさま、おひさしぶりです。こちらでは(苦笑)。
「みずもり亭日誌」ではお知らせしたのですが、青土社から出ている『現代思想』という月刊誌の6月号「特集 ニューロエシックス」で、「信頼か、それとも脳スキャンか」という文章を寄稿しました。

 これを書く過程で、偶然見つけたニュースを紹介します。
 

遠隔嘘発見〔器〕が倫理的問題をもたらす
Remote lie detection raises ethical issues

Wednesday, 9 April 2008 Eric Bland
2008年4月9日、水曜日、エリック・ブランド
Discovery News
ディスカバリー・ニュース

 血圧や脈拍、汗を離れてモニターする新しい方法が、健康の徴候を調べるだけでなく、人々に嘘発見テストを実施することに使われうる。彼らの認識も同意もなく、である。
 研究者らは自分たちの研究がただの実演に留まっていることを強調するが、サブ・テラヘルツの波を使う商業ヴァージョンが、理論的には、離れて〔医療の〕患者をモニターし、運動性を評価し、疾病を診断し、そして嘘を検知するのを手助けしうるだろう。
 カギは、人の汗管の驚くべき形状にある。
 画像化技術における近年の発展が、汗管(汗腺を皮膚の外側につなぐ小さなチューブ)が螺旋状であり、コルクスクリューのようなかたちであることを明らかにしている。
「現時点では、なぜ自然がアンテナのようなかたちをした汗管をつくることを選んだのか、はっきりしません」と、イェルサレムのヘブライ大学の物理教授で、『フィジカル・レビュー・レターズPhysical Review Letters』における研究の共著者であるアハロン・アグラナトAharon Agranat は言う。
「私たちはただ、〔その形状を〕探っているだけです。
 共著者で同僚のユリ・フェルドマンYuri Feldman教授がそうした汗腺の画像を見たとき、それらは彼に、基礎工学の分野でしばしば用いられる螺旋状のアンテナを思い出させた。

第一に、ねじれを見よ

 ねじれの数のようないくつかの要素を計測することによって、どんな初心者の電気工学の学生でも、そのアンテナが相互作用するエネルギーの波長を計測できる、と物理学者たちは言う。
 ヒトの汗腺の波長は、サブ・テラヘルツ、つまりサブ・Tレイ〔T線〕の範囲に入る。
 フルTレイは、近年、さまざまなそのほかの応用方法に使われている。隠れたアートワークを明らかにすることから、隠された武器を発見することまで。Tレイは、そのエネルギー的ないとこであるX線とは違って、無害である。

次に、機械をつくる

 Tレイ〔T線〕をつくり、検知する機械をつくることによって、科学者らは、身体の最も大きな器官、つまり皮膚に埋め込まれた、何百万もの小さな「アンテナ」に相互作用する波長を、自分たちは見ることができる、と言う。
 汗はTレイをつくりはしないのだが、汗の産生は、汗管のアンテナの後に引っ込み、跳ね返された波長を変化させる。
 そうした波長を測定することで、科学者らは、次に、どれだけ、そしてどこで人が汗をかいているのかを測定することができる。

次に、その汗を見よ

 身体のさまざまな部分が、理由によって汗をかく。辛いチリペッパーを食べることは、額に、吹き出すような汗を出させる。
 日光浴は、胸や背中で、汗腺を活性化させる。
 さまざまな疾病や、医療的な健康状態は、そのほかの汗腺を活性化させる。一方で、それらは、血液や脈拍を変化させる。
 最終的には、正確な汗マップやそのほかの研究の開発においては、物理学者たちは、人が汗をかいている場所にもとづいて、疾病を診断できるツールをつくり出すことを望んでいる。
 最近のテストでは、研究らは、血圧や脈拍をも離れて測定した。そうしたバイタルサインにおける変化に直接リンクする、ある種の汗かきをモニターすることによって。

遠隔モニタリング

 現在のところ、血圧を測る唯一の方法は、空気注入式圧力カフinflatable pressure cuff か、外科的に埋め込まれたモニターを使うことによるものである。汗を測る唯一の方法は、皮膚のごく一部で電極を使う、煩雑なプロセスを通じたものである。
 この新しい方法は、離れて、かつ継続的に行なうことができる。
 一方で、この新しい研究に慎重な、マサチューセッツ州コンコルドのエマーソン病院の医師で、この研究には関係のない、ジェームズ・ウォルフは、「これは、研究のまったく新しい領域を開きうる」と言う。
 離れて汗や脈拍、血圧を測ることは可能ではなかったので、誰も、この技術が使われうることについて考えてこなかった、とウォルフは言う。

汗かきの嘘つき

 この装置はまた、遠隔嘘発見器としても使われうるかもしれない。彼らの認識も同意もなく。
 人は嘘をつくとき、生理学的な反応を引き起こす。速い脈拍、高い血圧、そして汗の増加。ポリグラフ・マシンは、そうした反応を計測するのだが、それは、人に身体的に接触されなければならない。
 訓練されたプロは、ポリグラフをうまく逃れることができる。しかし、もし人がつねにテストされていることを知らないとしたら、この新しい方法はもっと効果的になりうる。
 ペンシルバニア大学の生命倫理教授ジョナサン・マークスは、この方法を使う嘘発見〔装置〕は、いまのところ、正確さに問題がある、と言う。
 スキャンされているとき、何かほかのことについてすでに不安な人は、擬陽性をもたらしうる。
「人々のプライバシーについての懸念があります」とマークスは言う。「生理学的なデータのために、人々をスクリーニングすることの正当性はありますか?」
「どこであなたはこれを行ないますか?」

 正確さはいわゆるポリグラフと同じぐらいでしょうから、それほどのものではないと思います。
 しかし正確さとは別に、いつ、どこで、そして誰に対して使うべきなのか、精査が必要なことはいうまでもありません。
 しかしそれにしても、『現代思想』への寄稿文で紹介したものもそうなのですが、脳科学といわれる研究のなかには、一歩間違えば、お笑いというか、トンデモ科学というか、おかしなものが少なくないという印象があります。08.5.31

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