月刊文藝春秋2019年4月号掲載「新種時評」生原稿です。 *********** いよいよ幕引きが近づき、平成を回顧する記事や番組が増えている。ここでは新書らしい視野の広がりで平成という時代を省みる機会を与えてくれそうな三冊を選んでみた。 小川原正道『小泉信三』中公新書は皇太子時代の今上天皇の教育常時参与を務めた経済学者の評伝だ。小泉は慶応義塾の塾頭として最愛の息子を含む多くの学生を戦地に送っ…
ガンダムって団塊文学だったって知ってた?
月刊文藝春秋2019年5月号掲載「新書時評」生原稿です。ネット化されていないようなので校正前のものを上げておきます。 ****** 4月といえば入学式。中でも”最高峰”東京大学に集った新入生は晴れやかな思いでいよう。だが、50年前のキャンパス風景は全く違っていたはずだ。学生運動の影響で東大入試の中止が決まり、新入生がいなかったからだ。 東大闘争とは何だったのか。学生として渦中で経験した富田武は『…
改元と日本辺境論
月刊文藝春秋2019年6月号掲載「新書時評」の生原稿です。前任校でお世話になった澤井啓一先生の訓読論に影響を受けて書いています。論文の抜き刷りを頂いたのが懐かしい。 ********** 日本オリジナルか、中国の古典がルーツなのかーー。新元号発表後に起こった論争は日本が中国文化の影響圏内にあった歴史を改めて思い起こさせた。 漢文明の周辺に位置していた経緯は朝鮮半島の国々も同じ。であれば仲睦まじく…