産経新聞大阪版7月23日夕刊に掲載された「複眼鏡」。新聞紙上では分量がきびしくて割愛した部分を復元してあります。 第159回芥川賞は高橋弘希氏の『送り火』に決定した。おそらく注目度ではそれを上回っていた北条裕子氏の『美しい顔』は賞を逃した。 注目を集めたのには理由がある。『美しい顔』は芥川賞に先駆けて第61回群像新人文学賞を受賞し、若い女性新人作家の鮮烈なデビューを印象づけていた。だが、しばらく…
存在しない神に祈る
1月12日の大学礼拝を担当しました。口頭では色々余計な言葉を挟んでいますが、元になったは以下のような原稿でした。 ******* 2018年1月12日の大学礼拝を始めます。 賛美歌21 575「球根の中には」をご一緒に賛美したいと思います。 差し支えのない方はご起立ください。 ***** ご着席ください。 聖書をお読みします。今日の聖書箇所は新約聖書ヨハネ黙示録22章17節から21節までです。新約…
対話することがまず難しい
読売新聞2016年12月の論壇キーワードの入稿前の生原稿です。大塚英志さんの『感情化する社会』にインスパイアされています。だいぶゲラで手を入れたような気がするのですが…。 ***** 権威あるオックスフォード英語辞典(OED)を出版するオックスフォード大学出版局は、その年を象徴する言葉を毎年選んでいる。2016年は、客観的な真実が蔑ろにされ始めた状況を示すPost-truth(ポスト真実)の語を…