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2006年01月25日

 ■ 「嫌下流社会」シリーズ その5 「第4章 年収300万では結婚できない!?」

第4章 年収300万では結婚できない!?
(第3章は結論はやたら簡単なワリに、グラフを用意したりと説明のための準備がいろいろと必要なので、ちょっと後回しにします。)

 まず、「表4-1」について。
 12ページに記してある「欲求調査」の調査結果から、上層、中層、下層のそれぞれの生活水準を点数で表して、上層では80点以上が増えており、下層では60点以下が増えているというのだが、これが一体なんの点数なのかが、読者には全く分からない。
 生活水準というのだから、何か「あれを持っていれば何点、年収がいくらなら何点」という点数なのかも知れないし、逆に3章で扱ったような「個人的にはこのくらい」という層意識を点数かしたものかもしれない。
 そんなことをいっても、このアンケートがどのようなものであったかは、この本に記された内容だけでは闇の中だ。もし、この「欲求調査」に関する詳しい資料があったら教えてほしい。

 それからしばらくは意味不明なゴミデータが続く。何らかの意味がありそうなことは書いているが、実際にはなんの点数なのかもなんのデータなのかも一切不明のままだ。ここで注目したいのは、その全てを表にして、パーセンテージであらわし、「網掛け強調」をしている点だろう。
 なるほど、パーセンテージで表せば、表の貧相な内実を覆い隠すことができるし、自分の主張に近しい部分を網掛けしておけば、見た目で印象づけることができる。しかし、じっと目をこらしてn値を見れば分かるが、その母集団のあまりの少なさに、恥ずかしくなること請け合いである。
 特に「表4-2」は、パーセントを「人数」に直してしまえば、小学生ならば先生に誉められるレベルの代物でしかないことは一目瞭然だ。特に「上」の貧相な数値に、思わず目を覆いたくなる。
 また、この女性の「下」の数値を見ていただきたいのだが、網掛けされているのは300万未満の35.5%の箇所だが、数値の最大値は300万〜の48.4%の箇所である。
 つまり、網掛け部は、あくまでも筆者の主張上、注目してもらいたい位置を強調しているに過ぎず、データとしての注目点では決してないということに注意したい。

 次に、この章のメインである、124ページの「図4-2」に触れる。
 これを見ると、さも年収300万と500万の間に大きな格差が存在し、両者の結婚率に2倍もの差があるように見える。
 しかし、冷静になってよく見てほしい。何かおかしくはないだろうか?
 まず、150万未満が「0%」というのがおかしい。同じ意味で、1000万以上が「100%」というのもおかしい。この1000万円以上が100%なのは、女性の方も同じである。
 確かに、年収150万円未満で結婚している男性を見つけるのは難しいかも知れないが、1000万円以上で結婚してない男性を我々はよく知っている。たとえばプロ野球選手で1軍にいるような選手は年収1000万円以上であるが、全員が結婚しているかといえば、そんなことはない。
 そもそもパーセンテージに関することで、0%であるとか100%であるとかいう数値が出ること自体がおかしいのだ。これは母数がよほど少ないことを意味している。
 先程の表4-2でも触れたとおり、この図の根拠もあの母数のやたら少ない「欲求調査」によるものであり、その母数は100名である。これではこの不自然な数値は当然であろう。
 不自然といえば、所得の区分も不自然だ。普通こうした折れ線グラフでは、縦横の数値は等分で表されるものであるが、この所得は0〜150満未満(150万)、150万〜300万(150万)、300万〜500万(200万)、500万〜700万(200万)、700万〜1000万(300万)と、極めて不自然な値を取っている。
 しかし、それを考慮しても、このグラフでは年収300万と500万の間には、大きな差があるように思える。だが、もっとよく見てみよう。左上のほうだ。おかしな文章に気付かないだろうか?
 この図4-2は「男性の所得と既婚(初婚)率の相関」と名付けられているが、そのあとに「(既婚の場合は夫婦合計の所得)とある。

 ……
 ……
 ……事の重大さに気付くことができただろうか?

 つまり、こういうことだ。
 年収300万の独身者が、年収200万の相手と結婚したとすれば、それは年収500万として扱われる。
 結婚しなければ、男性一人の収入だから年収300万、結婚すれば夫婦揃っての収入だから年収500万。そして、この項目では支出は勘案していないから、働き手が増えることによる所得のマイナスはない。つまり、この図は最初っから「結婚をすれば年収が上がるようにできている」のだ。この図はさも「年収が上がれば結婚率が上がる」かのように描かれているが、実際は結婚している人間ほど、収入が上がりやすい「仕掛け」を施したグラフなのである。
 さらに言えば、この図においては、年収200万円程度なら、結婚の有無で容易に上下するので、年収300万〜500万で結婚していない66.6%と、年収500万〜700万で結婚している78.3%の間の収入差は、実はそれほど明確なものではない。また、結婚している年収300万〜500万の33.3%は、年収150万〜300万の独身者に近い収入なのかもしれない。というように、珍妙な仕掛けのために、この図では年収での結婚率の多少を調べる事がまったく不可能である。

 あと、もう一つ、決して無視するわけには行かないことがある。
 それは、「この年収はいつの時点の年収なのか?」という点だ。
 つまり、結婚を決める場合、最も重要なのは「その時点の年収」だろう。もちろん、今後の収入増加も考えるだろうが、この調査は実際の年収を調査しているのだから、この調査において、結婚にとってもっとも重要なのは「結婚を決めた時点での年収」だ。
 しかし、このグラフでは、それが一切分からない。まさかもう50年ぐらい連れ添った老夫婦の、現時点でのデータをとっているのではなかろうとは思っても、それを裏づけるデータは一切示されていない。このグラフの元になっている「欲求調査」には昭和ヒトケタ世代も調査対象になっているから、ありえない話ではないのだ。少なくともこのグラフには「男性」としか書かれていない。

 ここまで理解してもらったうえで、改めてこのグラフを見ると、これが意味不明の、ねじ曲がった棒が空中に浮いている絵か何かに見えてくるハズだ。それはまさにこのグラフの正体である。このグラフは一切何も表してなどいないのだ。


 結局、こんなゴミデータを並べて作り上げたのが、この『下流社会』という本である。
 本当に、この本に書かれている事を信じてしまう人たちは、何を考えて生きているのだろうか?

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