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2006年02月17日

 ■ 「嫌下流社会」シリーズ その8 で、結局「上中下」ってなに?

「嫌下流社会」シリーズ その8
 で、結局「上中下」ってなに?

 第5章に入る前に、ここで『下流社会』の図表の中に書かれている「上中下」とは何かということを明確にしておきたい。
 第3章の一部の考察で既に示したように、図表で扱われる「上中下」という概念はこうである。

 三浦展は、まず「あなたの生活水準は次のどれにあてはまると思いますか」と尋ね、「上」「中の上」「中の中」「中の下」「下」の5つから1つを選択させた。
 そして、「上」「中の上」を合わせて「上」、「中の中」を「中」、そして「中の下」と「下」を合わせて「下」としたものである。
 これは、内閣府が行なっている「国民生活に関する世論調査」の調査方法をそのままマネたものである。
 「国民生活に関する世論調査」ではこういう質問項目になっている。

Q8 〔回答票9〕 お宅の生活の程度は,世間一般からみて,どうですか。この中から1つお答えください。

(ア) 上
(イ) 中の上
(ウ) 中の中
(エ) 中の下
(オ) 下
    わからない

 「意識調査」においても、ほとんど同じ質問がされたと思われる。

 で、このことが何を意味するかといえば、『下流社会』でいう「上中下」という概念は、あくまでも「本人の意識の上」の「生活の程度」というものでしかないということだ。
 つまり、本人がどう思っているかという主観的な観念であって、決して収入やライフスタイルといった、客観的な意味合に点数付けなどをして、そこから立ち上げたデータではないのだ。
 具体的には、これを客観的なデータとみなすためには、まずは年収1,000万以上は10、150万未満は0、車の車種ごとに高級車は5、大衆車は3、車がなければ0。などと、収入やライフスタイルごとに指数を設定し、何ポイント以上が「上」で、何ポイント以下なら「下」などと分析する必要がある。
 こうした作業を経て初めて、客観的な「上中下」を表すことができる。その場合「上中下」は、イコール「層」の概念となる。

 というわけで、これはあくまでも主観的な観念でしかないわけなのだが、たとえ主観であっても、その意味合いの見極めは慎重に行なう必要がある。
 この調査上で、解答者が自らを「上中下」のいずれに自分を当てはめるかというのは、この質問からは全くうかがい知ることができない。
 それこそ、年収が何千万もあり、人も羨む生活をしている人が、人生に不満をもって自分を「下」と称するかも知れないし、貧乏でも自分の生活に満足して「上」と称する人がいるかもしれない。
 そしてその不満や満足は、あまりに多種多様過ぎて、他人には計り知ることができない。もちろんアンケートの項目をこと細かくしていけば、大まかには見えてくるかも知れないが、それでも明確ではない。
 だから、この分類ははっきりと「何かの上下」ということはできず、このアンケートの文章にあるとおり「お宅の生活の程度」という極めて曖昧な言葉でしか定義できない。
 この曖昧な「上中下」という言葉を、「流」と理解し、現代社会を切り取ろうと三浦展が考えて記したのが『下流社会』なのであるが、その短絡的な考察と、自らの偏見を一切考慮しなかったが故に、このような駄本として流通。そしてさらにそれを利用しようとする愚者が溢れているのが、『下流社会』を巡る悲惨な現状である。


 まとめとして、以下に、今まで出てきた概念をまとめる。

 ・実際(客観的な)の金銭的余裕である「上中下‘層’」
 ・(主観的かつ客観的な)金銭的意欲である「上下‘流’」
 ・(主観的な)自己判断である「上中下」という「生活の程度」

 この3つの違い、特に図表で使われているのは、すべて「生活の程度」と呼ぶしかない非常に曖昧な表現である。ということをしっかり頭に叩き込んで、以降の章に望んでいただきたい。

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