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2007年06月22日

 ■ 若者の貧困を知ることから逃避してはいけない

なんとあの『下流志向』内田樹先生が私の事を中央公論で取り上げてくれたそうで。

“時代遅れ”の学校が子どもの下流下を食い止める

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内田 そうですね。今の若い人たちの中には実際に
「戦争を期待している」と公言する人までいますから。

諏訪 そんな人がいるんですか?

内田 ええ、若者のワーキングプアが生まれているという
中で出てきた特異な論調だと思うのですが、本当に
いるんです。そのロジックは要するに
「格差が固定している時代の中で自分が最下層にいる。
もし戦争になれば全員が不幸になる。不幸において平等が
達成されるなら私は戦争を歓迎する」
ということです。自己努力ではシステム内での上昇が
望めないから、システムそのものを壊してしまえという
危機待望論です。近代後期社会が行き詰まっていることは
たぶん、みんなが感じている。でも「歴史は完成に向かって
進化している」という進歩史観についてはなぜか依然として
揺るがない同意がある、立ち止まるとか、元に戻るとか誰も
考えない。
ほとんどの人は危機待望論もそうですけど、そこで
変化は一気にシステムを作り変えようとする。「ウェブ進化論」
的な論調も特徴的だと思います。時間をかけてゆっくり
社会を変えていくことに我慢がならない。今すぐ変えてくれと
要求する、今の社会理論に共通するのはこの「いらだち」です。

 決して批難はされてませんが、賛同はされていません。
 最後の方の「時間をかけてゆっくり」という話は、まさに『下流志向』で展開される、「すぐに(評価に対するタイムラグなく)評価を手に入れようとする消費主体性」すなわち「無時間モデル」を持ち出した批判です。

 しかしねぇ、内田先生。私たちのような経済弱者には時間がないんですよ。
 内田先生は「経済は常に膨張するorするべきだ」という経済進歩史観を疑ってないのでしょうが、内田先生のような裕福な方はともかく、私たちは右肩下がりの経済体制を生きているわけです。それももはやストックが尽きかけた状態で。
 ハッキリいえば「稼ぎ頭の親が死ぬ時が我々の寿命」であり、もはや経済氷河期世代が上はもう40才、その親が70才になろうかという時に、「今後、いつか評価される時」などを待ってはいられないのですよ。

 第一、我々はもはや10年以上「正当な評価」を待ちつづけているわけです。
 「待ち組」云々ということをいったのは、たしか猪口邦子だったとおもいますが、現在のネオリベ政権は我々に「無時間的消費主体となれ」と迫る。これまでの10年という蓄積を打ち捨てろという。
 しかし、それを打ち捨てれば、我々には「ただ10年間年をとった」という、まさに「待つだけだった待ち組」としての価値しか残らないわけです。それこそ企業が「正統」に我々を「クズだ」と判断して、打ち捨てる理由が生まれてしまう。
 私はそうした「フリーターという労働者であった10年」というのを評価してほしいと考えています。
 フリーターの仕事というのは、賃金に換算されませんが、しかし社会の中になくてはならない仕事です。フリーターがいなければ内田先生は買い物ひとつできませんし、車にガソリンを入れることだってできないでしょう。
 しかし、そのような賃金的にまったくワリに合わない「雪かき仕事」をしながら、そうした仕事が評価されることは一切ありません。それどころか現実にいるかいないか分からないような、妄想のニートという都市伝説的な存在と同一視されて「働かないのは自己責任」などと、働いていることすら否定される始末です。

 そのような状態で、「いつしか自分たちが評価される社会をつくることができる」など、時間と現状を無視した妄想でしかありません。
 部屋の中央に張りつけにされ、両脇からトゲが着いた壁が今にも迫ってきている現状で、「いつかこの現状も変わるだろう」などと達観しているのは、ただの自殺願望です。
 内田先生は「今の社会論理」と一括りにするけれども、所詮は「強者の傲慢」でしかない安定労働層の「安直な生活を手に入れられない、いらだち」と、貧困労働層の「死へのいらだち」はまったく別物ではないのですかね。ウェブとか関係ないし。

 まぁ、日本の貧困線が年収200万だから「200万なら絶望的な貧困とはいえない。だから貧困は存在しない」とかいうレベルの経済知識しかない内田先生に、そうした区別はつかないでしょうね。
 若者の悲惨な状況はさまざまな論者が取り上げているのだから「情報が上まで上がって来なかった」などと言って、知ることから逃走してはいけないのですよ。内田先生。

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