2020年五輪の記事を書くので、文庫になっていた野地秩嘉『TOKYOオリンピック物語』を読んでみた。 そこでスタートダッシュする選手を写した有名なポスター(たとえばこんなサイトで見られます→http://plginrt-project.com/adb/?p=20406 第二号ポスターと書かれている方)の撮影状況が再現されている。早崎治は都内にある大型ストロボを総ざらい集めて20基の同時発光で選手…
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ハンセン病療養所と「赤ちゃんポスト」
by 武田 徹 •
産経新聞大阪版「複眼鏡」に書いた記事の元原稿です。2013年夏休みの収穫。 ****** 夏休みが少しだけ取れたので、熊本に出かけた。ぜひ見ておきたものがあったのだ。 待労院という私立のハンセン病療養所が熊本にあった。歴史は古く、一八九六年に熊本を訪れたカトリック司祭ジャン・マリー・コールが、加藤清正を祀る本妙寺の境内に発病によって故郷に住めなくなったハンセン病者が集まっているのを見て、その保…
by 武田 徹 •
『中央公論』9月号に寄稿した時評の元原稿です。雑誌の発売期間が終了したので掲げておきます。 スタジオ・ジブリの新作映画『風立ちぬ』を観た。零戦の設計者・堀越二郎に小説家・堀辰雄を重ねて…といった内容は既に周知のことだろうから省く。ここではこの映画に込められた宮崎の意志と思想に注目してみたい。 「戦闘機が大好きで、戦争が大嫌い。宮崎駿は矛盾の人である」。鈴木敏夫プロデューサーは映画のパンフレットに…
歴史を現在に更新するための観光
by 武田 徹 •
Facebookに投降したものと同じ内容です。 ***** 『思想地図β4-1 チェルノブイリ、ダークツアーガイド』読了。書店では品切れが多くて手に入れられなかったのだが、版元から御恵投いただいて早めに読めた。感謝。 「観光」をキーワードにするという話を前に聞い時に思いだしたのは、かなり離れた文脈ではあるが、かつてのSONYのAIBOだった。その開発にあたって天外伺郎なるペンネームで神秘主義的な著…
「なんとなく原発大国への道」
by 武田 徹 •
ハフィントンポストの参院選特集の中の一本として執筆。 ******** 原発問題は、参院選では特に争点となって盛り上がらないまま、再稼働に向けて大きく舵を切るという「最悪」の結果になりそうだ。 実はこの道はいつか来た道なのだ。先月に刊行した拙著『原発論議はなぜ不毛なのか』(中央公論新社)で、脱原発運動が実を結ばないのは、それが「選択できない」からだと書いた。拙著の中では二又に分かれる山道の比喩…
再帰的デザインへの道を開く ―― デザインあ展
by 武田 徹 •

デザインにはうるさい、筆者はそんな自負がある。普段の服装を見ている周囲の人がそれに同意してくれるかは大いに疑問だが、その問題は追々解決してゆくとして、デザインにうるさいつもりの筆者としては見逃せない展覧会が「デザインあ」展だ。 NHK・ETVで放送中の同名番組から派生した展覧会で、大学で教えているメディアアートに興味がありそうな学生にも勧めて来た。だが自分自身が観に行けたのは実は最終日。何度か…
出版史と思想史をつなぐ
by 武田 徹 •
週刊読書人2013年5月24日号に掲載された根津朝彦さんの『戦後『中央公論』と「風流夢譚」事件―「論壇」・編集者の思想史』の書評の元原稿です。 ******* 本書は戦後から1972年までの論壇史を、特に60年安保後の『中央公論』(以後、『中公』)の変容に焦点を当てて論じる。 第二次大戦期の休刊を挟み、戦後46年に復刊された『中公』のライバルは『文藝春秋』『世界』だった。しかし『文藝春秋』は「…
脱原発をかりそめに終わらせないために
by 武田 徹 •
図書新聞2013年5月18日号に掲載された東京新聞こちら特報部編『非原発--福島からゼロへ』書評の元原稿です。 ******* 本書は東京新聞の人気連載「こちら特報部」が展開した脱原発キャンペーン記事を一冊にまとめたものだ。「こちら特報部」は1968年に始まった同紙の人気コーナーで、見開き構成でひとつのテーマを扱い、週刊誌よりも早く、深い記事を目指して来た。311以後、その連載の殆どが原発関連記…
自前の科学を取り戻せるか
by 武田 徹 •
毎日新聞「パラダイムシフト 核なき社会へ」連載として2013年5月13日夕刊に掲載された記事の元原稿です。掲載版とは用語など若干違っています。 ***** 戦争写真家ロバート・キャパが1954年4月に焼津で撮った作品を観たことがある。初老の男性が孫のような年齢の赤子をおぶった、ほのぼのとした写真なのだが、その変哲のなさが逆に強い印象を残した。 その時、キャパは水爆実験で被曝し、ひと月前に帰港…
ネット選挙解禁と「選挙の公共性」
by 武田 徹 •
インターネットを使った選挙運動を解禁する改正公職選挙法が可決・成立した。夏の参院選以降、地方選挙も含めて適用される。 選挙関係の情報提供で絶対に守られるべき原則は、今も昔も変わらない。「機会の平等」だ。限られた出自の人しか立候補できない、当選できないとなれば民主主義は選民主義に変わってしまう。 たとえば公職選挙法の政見・経歴放送は、候補者と届出政党が政見を無料で録音、録画できるとし、資力の多…