『それぞれのもうひとつ ――日系人という社会――』近谷純子

 日本からブラジルへ渡った人がいる。ブラジルから日本へ渡った人がいる。これは別々の話ではない。日本からブラジルへ、そしてブラジルから日本へ、あるいはまた日本からブラジルへ、「移民」をめぐるひと続きの話だ。移民という日本語に対応する英語には、「immigrant」と「emigrant」のふたつがある。前者はある国、たとえば日本に「入ってくる人」を言い、後者はある国から「出て行く人」を指す。いまの日本で「移民」の響きがどこか遠くに感じるとしたら、移民に関して、「入る」「出る」のふたつの概念を区別する言葉がないというのも、そのひとつの証拠だろうか。でも、移民は自分とは無関係な話だと思っていたらいつか取り残されるのは自分のほうだと、私は途中でそう気づかされることになった。


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