『働くという選択肢』井上千子


〜反高齢者労働〜
需要もある、意欲もある、そのうえ金も時間もある。そんな高齢者の労働に反対する意見があるのも事実である。
労働者が65歳まで働ける「継続雇用制度」を2013年までに企業に義務付けるという国の方針。これは定年後60歳から65歳までの無収入の5年間に国が払うべき年金を企業側に回しているにすぎないと言った意見。
ベテラン高齢者1人分の人件費で平均2?3人の新入社員が新規採用可能で、高齢者の継続雇用は若者の新規採用機会を奪うことになる、といった意見。
単純な高齢者の継続採用は人材のミスマッチを招き企業の生産性を低下させるという意見。
天下りが横行するのではないかといった意見などなど。
その中でも根強い意見として挙げられるのが、老人は不似合いなことをせず引退するのが良いという年寄りの冷や水的意見である。
2004年9月14日、読売新聞の記事。
“進まぬ高齢者雇用 法も逆効果 根強い年齢差別”
記事によると高齢者労働促進のためアメリカの年齢差別禁止法(40歳以上の労働者について、年齢を理由に解雇や採用や昇進での差別を法律で禁止したもの)に倣い、同内容の法律制定を日本でも検討中であるという。しかしある大学院の授業で「扱いづらい」、「弱弱しい」、「早く引退すればいいのに…」といった高齢者への年齢差別が根強いことが明らかになった。
これに対して雇用における年齢差別撤廃へ向けた特定非営利活動法人、年齢差別を失くす会はこう答えている。「年齢差別撤廃運動の目的は、年齢に関係なく、何度でも再チャレンジ(やり直し)が出来る社会を創造することです」。平成15年日本人の平均寿命は男性が78.36年、女性が85.33年。人生80年の時代である。60歳あるいは65歳からの新たなチャレンジを“年寄り”の冷や水と揶揄する時代が終焉を迎える日は近いのではないだろうか。

**参考文献**
・岸本英太郎『現代のホワイトカラー』ミネルヴァ書房
・石川弘義、宇治川誠『日本のホワイトカラー』日本生産性本部
・C・ライト・ミルズ 杉政孝訳『ホワイトカラー 中流階級の生活探求』東京創元社
・尾高 邦雄『日本的経営?その神話と現実』中公新書
・朝日新聞社『AERA臨時増刊 Mature』
・田尾雅夫、高木浩人、石田正浩、益田圭『高齢者就労の社会心理学』ナカニシヤ出版
・高齢者雇用開発協会『企業事例ベスト25』T〜[
・高齢者雇用開発協会『エルダー』平成6年5月号


前のページへ   作品一覧へ