『ブランドに恋して−日本人のブランド消費の今−』加藤晶也


1.はじめに みんな高級ブランド品を持っている!

 とある休日。何気なく街に出る。絶えることのない人通り。ぼーっとしながら、待ち行く人々を眺めていると、ふと気づく。

 さっきから同じようなバッグを持った人が、何人も目の前を通るのである。

 おなじみの茶色の生地のモノグラム柄、アルファベットの「C」と「C」が背中合わせに重なった大きなロゴ、Gが背中合わせにくっついている小さなロゴがモノグラムになっているもの……どれも、いわゆる「高級ブランド」といわれるブランドのバッグである。こうやって意識的に眺めてみると想像以上に、高級ブランドの品物を身につけている人が多いものである。シャネル、ルイ・ヴィトン、グッチ、エルメス、クリスチャン・ディオール……

さまざまな高級ブランドのバッグや財布を持っている人が、街中を歩いているし、自分の周囲にもいる。渋谷でカメラを設置して定点観測を行ったら、いったいいくつの、あのモノグラムのついたバッグを持った人がその前を通るだろうか。満員の山手線の車両一台の中に一体、何人のあの「C」が重なったロゴのバッグを持っている人が乗っているだろうか。よほどの暇があったら調べてみたいものである。
 また周囲の友人などでも「高級ブランド品」を持っている人は多い。友人との食事の際に会計のために財布を皆取り出したとき、男女を問わず「高級ブランド」の財布を持っていることにびっくりすることがある。それらは決して安い代物ではない。しかし、みんな持っているのである。現在、日本には2500万個以上ものルイ・ヴィトンの製品が存在しているという。日本人のおよそ5人に一人はルイ・ヴィトンの商品を持っている計算だ。ルイ・ヴィトンジャパンの売り上げはルイ・ヴィトン全体の30%を超えているといわれている。日本人の皆さん、海外に行っても胸を張ってルイ・ヴィトンの店に入ってください。ルイ・ヴィトンの経営を支えているのは他ならぬ日本人なのだから。
 またセゾン総合研究所の行った20代〜60代の男女1200人に行ったアンケートによれば、男性で7割強、女性で9割弱が「海外高級ブランド」の商品を持っている、という調査結果が出ている。女性のほとんどが何かしら「高級ブランド」の商品を持っているのである。また、この調査において、「海外高級ブランドのバッグ」の購入限度額は平均で六万円であり、かなりの額を「高級ブランド」のバッグに費やしてもいいと、多くの人が考えているのである。なぜ、これほどまでに皆「高級ブランド品」を欲しがるのだろうか。その素朴な疑問がこの作品の出発点である。
 中学生のころ、母親が学校の保護者会や部活の食事会に集まり、帰ってくるといつも「○○君の母親はブルガリの時計を持っていて……」「△△君のところはエルメスのケリーバッグを持ってたわ」「××君のお母さんなんて見るたびに違うシャネルのカバンを持っていて……」などと、うらやましそうに語っていたのを思い出す。そして、新聞のブランドショップの折り込みチラシを見ながら「これはちょっと買えないわ〜」とため息を漏らすのである。私も一緒にそれを見て「うわ〜、高いね〜」などといいながら一緒に見たものだ。
その頃から友人や初対面の人のバッグや財布のブランドチェックすることが好きだった。今思うとなんといやらしい中学生だろうか。
気づいてみれば自分の友人なども「高級ブランド」のバッグや財布を持つようになっている。ファッションに関して、おそらく「高級ブランド」ではないにしても多くの人が少なからず「ブランド」というものにこだわっているのは間違いない。
 ほら、今これを読んでくださっている方も、自分の着ている服や、クローゼットの中にあるバッグ、財布、アクセサリーを見てほしい。気づかないうちにいかに自分が「ブランド」というものにまみれて生活しているかがわかるだろう。わたしたちはもはや「ブランド」というものなしには生活することができない。
 「ものを運ぶ」という同じ機能を持っていても、ユニクロのバッグなら1000円、エルメスのバッグなら数十万円、というような状況に疑問を持ったことはないだろうか。先ほどのセゾンのアンケートからバッグを購入する際の限度額を多くの人が数万円と平気で指定するのはなぜか。世の中には数千円から、十分な機能を持ったバッグが山のように存在しているにもかかわらず、である。
 人々はなぜ「高級ブランド」に魅了されるのか。「高級ブランド品」に限らず、私たちは「ブランド」というものに囲まれて生活しているし、多くの人々は、生活とファッションとが切り離せないものになっているといっても過言ではない。みんな必死でお洒落をしようともがいている。休日に街を歩いていても、ファッションブランドの袋を持っている人を本当に多く見かける。いったいなぜ人はこれほどまでに「お洒落」を追い求め今日も買い物に走るのだろうか。そして、その中で若者は高級ブランドをどのように受け入れているのであろうか。多くの人々を虜にしてやまない、ファッションと「高級ブランド」の関係について探っていきたい。


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