はじめに
犬は、私たちの生活に密着した生き物です。飼い犬に「お手」などの芸を教えたことはありませんか? 私も、かつて飼い犬のぽちに「お手」「おかわり」を教えました。食事の際に、「お手」「おかわり」をしてから、ご飯をあげます。ぽちは、どこにでもいる白い雌の雑種です。「お手」をしたからといって、偉い犬になったわけでもなく、他の犬でも何かよほどのことが無い限り、教えればできることです。でも、そこに、ぽちと私のコミュニケーションが成立します。ぽちにとってみれば、「早くご飯が食べたいよぅ!」と言わんばかりに尻尾をぶんぶん振りながら、ご機嫌で「お手」をしてくれます。それを見た私は「可愛いヤツだなぁ〜」と、さらにいとおしくなり、他でもないこのぽちが、愛情の分だけきちんと応えてくれる気がするのです。
さて、本題は「介助犬」。どんな犬か知っていますか? 「盲導犬なら、知っているけれど……」という人が多いことでしょう。盲導犬は、視覚障害者の目の役割をします。2004年に、映画『クイ−ル』(監督・崔洋一)が公開されたこともあり、盲導犬の役割を知った人や、興味を持った人がさらに増えたことと思います。
介助犬は、肢体不自由者の手足の役割をします。日常生活で、肢体不自由者が困難な動作の手伝いをしてくれます。例えば、物を運んだり、拾ったり。エレベーターのボタンを押したり、段差で車椅子を引っ張ったりと、介助犬の仕事は、飼い主・使用者となるユーザー(user)の体の状態によって異なります。
家庭犬がこういう動作をしてくれたらどんなにいいか……なんて、考えている人も中にはいるかもしれませんね。しかし、介助犬がユーザーの身の回りのことをすべてしてくれるわけではないのです。介助犬は、手足の不自由なユーザーを助けるためにいます。ユーザーが自立した生活を送るにあたり、外出や仕事をする際の手助けをします。芸ではなく、人を支える仕事をする犬。ペットと介助犬の大きな違いです。
身体障害者補助犬法が、2002年5月に成立し、翌年10月から全面施行されました。介助犬、盲導犬、聴導犬(聴覚障害者の耳の役割を担うよう訓練された犬)を補助犬とし、その育成・使用・受け入れに関する法律です。今までに、レストランや各交通機関などで補助犬の同伴について受け入れを拒否された経験を持つ障害者は少なくありません。ですから、この法律の施行はまさに悲願でした。
しかし、法律施行後の今、劇的に何かが変わったわけではありません。施行後にも、受け入れ拒否されたという報告があります。最近になって介助犬の存在が注目され始めたものの、認知度はまだまだ低く、実社会で接する私たちの中には法律はおろか、介助犬の仕事を知らない人がたくさんいるのです。
障害を持つ人の身体の一部となって生きる犬を受け入れ、共に暮らせる社会。そこは温かいと思いませんか?