『介助犬と共に生きる社会へ』熊谷早苗


介助犬ってどんな犬?
 2005年2月現在、介助犬使用者は全国で23名と言われています。介助犬の犬種は、ラブラドール・レトリーバーが一般的で、盲導犬の多くもこの犬種です。介助犬の適性があれば種類は問いません。雑種でもよいのです。ラブラドールの特徴は、性格が優しくて穏やか。頭も良く、体が大きいため力持ちです。段差がある所で、ユーザーの車椅子を引っ張ったりするには、相当の力が必要となります。また、比較的、毛が抜けにくいなどの要素も介助犬に適した犬であるといえます。とはいえ、介助犬になるからには、素質・適性が重要な鍵となります。補助犬として括られているからといって、盲導犬、介助犬、聴導犬が同じ犬で良いというわけではありません。人それぞれ、性格が違うように、犬にも異なる性格があるのです。それによって、介助犬に向いているが盲導犬には向かないというように、仕事と性格の適性を見合わせます。

  「どんな犬が介助犬に向いているの?」
 まず、攻撃性や警戒心が無く、人懐っこいことです。ユーザーの手となり足となり、色んな場所でお手伝いするわけですから、指示をもらってそれに反応し、仕事を楽しめることが重要になります。しかし、過度に反応し、興奮してしまう性格では困ります。いつ指示をもらっても反応できるように、そして、どのような状況にも順応する落ち着きや集中力を備えていることも必要です。
 刺激に対し、あまり過度に反応しすぎるのは困ったものですが、少しだけやんちゃな方が介助犬には向いているのかもしれません。
介助犬使用者のパイオニアである、木村佳友さんのパートナー「シンシア」は、幼少期には木村さんのご飯を横取りしてしまうくらいお転婆で、木村さんは手を焼いていたそうです。また、身体障害者補助犬法による日本初の認定介助犬使用者となった山口亜紀彦さんのパートナー「オリーブ」は、もともと盲導犬になる予定でしたが、その有り余る元気さは、盲導犬には向かないと判断されました。しかし、そこに居合わせた介助犬協会の方に、介助犬の適性がありそうだと素質を認められたそうです。
 介助犬がよくする仕事で「Take(テイク)=くわえて・取って」があります。例えば、「Take 電話」なら「電話をくわえて」です。この仕事ができるようになるために、その犬の最も好きなものを使ってトレーニングを積みます。
ユーザーが取って欲しいものは、いつも同じ場所にあるとは限りません。どのような所にあるかわからないので、目的とする物を箱の中に入れたり、高い所に置いてみたり。目的の物を、訓練する犬が一番好きなものにすることで、犬は楽しみながら頑張って取ろうとします。犬にとっては楽しい遊びの中で、身につけるべき動作を織り交ぜるという工夫をこらし、訓練していきます。

  「指示が英語なのはなぜ?」
 日本語には、方言や男言葉・女言葉があります。それにより、犬が混乱し、指示を理解できないということが起こります。しかし、英語はそのような複雑な用法が無いので、介助犬を育てたトレーナーと、ユーザーの間で使用する言葉が変わる心配はありません。
<指示語の一部>
Come by heel (カムバイヒール=左横について) 
Come by side (カムバイサイド=右横について) 
Come by stand (カムバイスタンド=立って)
Come(カム=おいで) Sit(シット=座る) Halt(ホールト=止まる) Go ahead(ゴーアヘッド=先に行く) Up(アップ=前足上げる)
Kennel up(ケネルアップ=身体ごと上がる) 
Leave it(リーベット=離れなさい、それに興味を持たないで) など。

 ここに挙げたのは、ほんの一部に過ぎません。これらの指示語と、日本語の単語・物の名前などを組み合わせてユーザーが望む指示を作ります。
 それでは、教えているときに最も重要なことは何でしょう?
それは、犬とよく目を合わせること。いわゆる「アイコンタクト」です。私たちは、犬をよしよしと撫でてあげることができます。でも、肢体不自由者で手を動かせない人は、それができません。だから、アイコンタクトでコミュニケーションを図ります。ユーザー側の感情を伝えることも大切ですが、犬の目を見て、ユーザーが理解してあげようとすることも大切なのです。そうすることで、お互いにどんなことを望んでいるのか、どのようにするべきか、だんだんわかってきます。人間だってそうでしょう?! 

 ちなみに。本を読んでいると、とても興味深い質問を見つけました。「猿の方が、手先が器用なんだから、介助動物に向いているんじゃないの?」というもの。確かに、猿の方が器用だし、そもそも人間に一番近い存在です。しかし、それゆえにダメなのです。人間がかかる病気と同じ病気にかかるので、向かないということでした。さらに、犬の方が猿よりも従順だということです。

前のページへ  作品一覧へ  次のページへ