『介助犬と共に生きる社会へ』熊谷早苗
ダイエーの取り組み
コンビニエンスストアーのローソンを含む、全国約8300店の巨大流通グループであるダイエーは、補助犬法が施行される10年ほど前から盲導犬、聴導犬、介助犬の順に受け入れを開始していました。盲導犬が、もっとも早く、93年から受け入れが開始されていました。さらに、盲導犬育成のための募金活動も実施しており、全国盲導犬施設連合会に寄付され、訓練や育成の費用に充てられています。
そして、99年に介助犬の受け入れが始まります。受け入れが検討され始めた頃、ダイエーの担当者が木村さんの家を訪れたこともあるそうです。ダイエーは介助犬の研究者と相談し、従業員対応マニュアルを作成しました。99年4月末、宝塚中山店において、木村さんにシンシアを同伴した上で買い物をしてもらいました。一般客にも公開されていたので、担当者はその反応も見ていたようです。
そして7月、全国のダイエーグループは、一斉に介助犬同伴を認めました。同年、「盲導犬募金1億円達成ふれあい教室」と題される催しが開かれました。実際にデモンストレーションを行い、目で見てもらうことで、文書で説明することの何倍もの効果があります。まさに『百聞は一見に如かず』です。このふれあい教室は毎年、全国各地で開催され、盲導犬ばかりではなく、すべての補助犬行っています。介助犬の受け入れと、ふれあい教室の開始年度は一緒です。これは、木村さんとシンシアのデモンストレーションの有効性が見出されたことが大きいのではないでしょうか。
また、補助犬法全面施行に伴い、店舗近隣に居住する補助犬使用者を招
待するという、大変、画期的な取り組み「WELCOMEダイエー」が実施されました。参加者には、ダイエーの商品券を進呈した上で買い物をしていただいたという所に、ダイエーの太っ腹ぶりを感じずにはいられません! 補助犬使用者への配慮と、他の買い物客へのデモンストレーションにもなり、この催しにより補助犬の存在を知った人が多くいたことでしょう。ダイエーグループの創業以来のモットー「お客さまの声を聞く」という強固な礎は、お客さまのどんな小さな声にも耳を傾ける姿勢の支えであるように見えます。
3.指定法人という認定組織
日本での介助犬の歴史は浅いです。どれくらい浅いのかというと、国内で訓練された介助犬が誕生したのが1995年といわれています。国内で訓練された介助犬が誕生する以前に、1991年にある女性がアメリカから連れてきたのが初めての介助犬です。介助犬が日本に来て14年、日本で生まれ育ち国内で訓練を受けた介助犬の誕生からまだ10年です。
盲導犬は、1957年に国産第一号が誕生しています。1984年に埼玉県の聴覚障害者2名に聴導犬訓練所が1号犬・2号犬を無償で貸与。これが、日本で最初に実用化された聴導犬です。こうやってみると、盲導犬・聴導犬使用者は、補助犬法が施行されるまでの長い年月の間に、かなり不自由な道を歩んできたことになります。
<指定法人の役割>
指定法人とは、補助犬として訓練された犬が、その使用者となるユーザーと共に公共施設など外部で適切な行動ができるかを認定する所です。また、能力が不足していると認める場合には、認定の取消をする機関でもあります。介助犬の指定法人は、厚生労働省の調べによると2004年10月5日までに5団体が確認されています。
指定法人の横浜市総合リハビリテーションセンターは、2003年に厚生労働省より介助犬・聴導犬の認定法人として指定を受けました。2005年1月30日までに11組の介助犬を認定しています。身体障害者更生施設長の小田芳幸氏は、補助犬は障害者の自立を補完する手段の一つであり、補助犬法は障害者の自立と社会参加で、そのために必要な認定であると述べています。
現状では、認定の基準が相対的で明確にされていません。各々の状態に応じた認定であると専門家は考えています。介助犬を必要とする人の障害の重度が、それぞれ異なるため、一律に同じ基準に達することは困難なのです。補助犬法が成立し、介助犬が使用者や各メディアを通じて、さらに知れ渡れば、介助犬の育成・需要がさらに高まることでしょう。そのためには、指定法人の認定の客観性をある程度、明確にする必要がありそうです。また、訓練事業者をはじめとし、介助犬の枠組みを越えて、補助犬として各関連機関との連携が重要になることでしょう。
4.育成補助事業
介助犬一頭を育成するのに、250万〜300万円かかるといわれています。盲導犬育成でも同じくらいの金額です。その資金源は、一体何でしょうか?それは、それぞれの育成団体の会費、寄付、行政からの補助金、制作したグッズ販売の売り上げなどです。2003年からは、身体障害者補助犬育成補助事業が障害者(・自立支援)社会参加総合推進の選択事業として加わり、一頭あたり150万円を例示額として350頭分(盲導犬300、聴導犬30、介助犬20)の予算が計上されました。
2003年4月から社会福祉法の改正に伴い、介助犬訓練事業は第二種社会福祉事業となりました。訓練事業者は都道府県に届け出をしなければなりません。貸与または給付事業についての公的助成制度も開始されるので、届け出をしなければ公的助成は受けることができなくなります。貸与等の事業内容及び方法については、各都道府県に任されるので、特定の指定訓練事業者だけに公費助成をする自治体も出てくるかもしれないのです。
5.介助犬の健康管理
介助犬としてユーザーの下で働くには、まず健康が第一です。介助のお仕事って肉体労働ですからね!
補助犬になるために身体機能を大きく変えなければならないことがあります。それは、不妊手術を受けることです。雌に限らず、雄も処置を受けなければなりません。補助犬法で避妊・去勢が義務付けられました。発情期の行動を抑制・コントロールすることは訓練できず、補助犬候補の段階で、訓練に参加する以前に手術を済ませなければならないのです。また、雌の場合、初潮を迎える前に手術した方が、乳がんなどの病気を防げるそうです。犬にも、成人病があるといいます。
木村さんのパートナー・シンシアは、ペットとして飼っていた最後7ヶ月のときに手術をしたそうです。しかし、木村さんは、ふと「恋も知らず、可哀そうなことをした」と思うと前述の著作の中で述べています。
もう一つ、身体機能で重要なことがあります。介助犬を含む補助犬たちは、排泄を訓練によってコントロールできるようにするのです。ユーザーの指示に従って、排泄できるようにします。このシンポジウムのように、長時間、座席に拘束されることもあります。一緒に職場へ出勤する介助犬だっています。常にユーザーのそばにいなければならないので、この訓練はとても大切です。しかし、大半のユーザーがパートナーの排泄時間や、その状況を汲み取って指示を与えているようです。
シンポジウムの最後、補助犬シンポジウム実行委員会代表・燒哲也名誉教授が締めくくりました。燒名誉教授は、厚生科学研究障害保健福祉総合事業・介助犬基礎的調査研究の班長を務め、3年間の継続研究を行いました。それまでに、歴史の浅い介助犬の研究事例がなかったため、茨の道を切り開いてきたといえます。
介助犬については、諸外国と比較して後進国の日本ですが、介助犬の誕生から急速な発展途上にあります。後進国だからこそ、前例の失敗や数々の事例を集めて、生かすことができます。日本は、その利点を大いに活用して介助犬先進国にも貢献できるように、介助犬アカデミーをはじめとし調査・研究を行っていけたらと思います。