『介助犬と共に生きる社会へ』熊谷早苗
取材ができる?!
シンポジウムが終わると、事務局長の橋爪智子さんにお礼を言いに、と思ったのですが、出入り口にいた橋爪さんは、会場から次々出てくる出席者との挨拶で大忙しでした。
一段落ついたものの、これから懇親会があるとの事で、本当に息つく暇もなくという感じでした。その合間に、橋爪さんが介助犬使用者で話が聞けそうな人を急遽、教えてくださりました。先ほどの記者会見で、会見席にいたオリーブのパートナー・山口亜紀彦さんです。しかし、山口さんもこれから始まる懇親会に出席するところで、大急ぎで自己紹介をし、お話を聞くことに。聞きたいことは、前もって色々と考えていましたが、全部聞く余裕などありません。それに、シンポジウムや記者会見である程度、わかったこともあります。でも、ここで聞かなければ、これから先、取材することは難しくなってしまう!頭の中で「あれはだめ、これはさっきあの人が言っていたし……」などと、質問を高速で考えた私──。
「山口さんは、補助犬法が施行されて、変化はありましたか?」
「う〜ん、そうですねぇ。僕は毎年旅行に行くんですけど、この前も受け入れを拒否されてしまいました。確かに、受け入れをする所は増えていますけど、まだ、そういう所もあるのが現状ですね」
と、懇親会が行われる会場に向かい、歩きながら話を聞きました。会場は、シンポジウムが開かれたホールと同じフロアで、すぐ近くです。山口さんの隣には、もちろんオリーブがいます。「私の大好きな山口さんに、何を聞いているのかしら?」と、ちらりと私の顔を見た丸い目の愛らしさに、思わず抱きしめたくなってしまいます。オリーブには、人の心を丸くさせ、安心感を与える力があります。これが、介助犬の素質であり、介助犬として働く彼女が培ったものなのだと感じました。
「そうですか。それでは、介助犬がいてよかったなぁと感じるのは、どんなときですか?」
「いつもそばにいてくれることで安心します。家にいるときも、仕事をしているときでも。そういう、精神的なものが大きいですね。でも、それが一番必要で、大切なことだと思います」
そう語りながら、山口さんはオリーブを見つめていました。その目は、なんだか、オリーブに似ているようで、見ている私は愛情のお裾分けをしてもらった気分で、とても温かい気持ちがしました。話しながら、ついには会場に入り込んでお話を聞かせてもらいました。取材は、ものの10分。あっという間です。それでも、言葉以上に得るものがありました。山口さん、そしてオリーブ、お疲れのところ、ありがとうございました。取材ができただけでなく、私はお土産までいただいた気がします。