『見ないを見る−−川崎市ホームレス緊急一時宿泊施設建設を巡る声と力−−』宮田清彦
聞けない
しかし、発言ができるもの同士でも会話が成立しないこともある。例えば、地域住民の会の西井氏はNPO法人水曜パトロールの会に対して、こう言ったという。「彼らのやり方はやり方で良いと思うんだけど、我々の所に来て話しろって言ったことあるの。俺らは反対してるわけじゃねえんだぞって。話聞けよと。行政のやってることがおかしいんだ。お前達からもそれを言え。会長に直談判した。ホームレスのためになるような施設を作りましょうって。そうじゃないと納得できないだろって。そこんところは理解してくれって」。
西井氏個人は水曜パトロール会との協力を望んでいたということだろうが、お互いの関係の中に協力するための土壌があったかどうかは疑問が残る。と言うのも、地域住民で水曜パトロールの会のメンバーが施設建設の際の住民説明会に出席していたのだが、施設の設置に理解を求める発言をしたところ、かき消されるような怒号に見舞われたという証言もあった。
もちろん、愛生寮の運営に両者、参画しているわけだから、お互いに誤解を解こうと努力しているのだとは思う。
しかし、お互い反目している同士の声は耳に入らない場合もあるということだ。話すこと以上に聞くことは難しい。ここで求められるのは、自省的な思考だ。もしかしたら、自分に非があるかもしれないと、相手の言葉に耳を傾ける態度。特に影響力の強い者であればあるほど、それに気をつけなくてはならないはずだ。