『見ないを見る−−川崎市ホームレス緊急一時宿泊施設建設を巡る声と力−−』宮田清彦


駅前の新しい「匂い」
 ホームレス問題は都市特有の問題である。しかし、その都市自体も今、変化を迎えている。都市がそれぞれ特有に持つはずの「匂い」が変わってきた。
 JR川崎駅東口、夜7時をまわると通勤客でごった返す。居酒屋の呼び子が威勢の良い声を張り上げて、ストリートミージシャン達が演奏の用意を始める。複合商業施設が軒を並べ、それぞれの施設が人を吸い込んでは吐き出していく。人口約130万人、政令指定都市の玄関口に人が絶えることはない。
 駅前で、一際目を引くのは、2004年3月にグランドオープンしたばかりの商業施設「川崎ルフロン」。日航ホテルの横にある。入り口の階段はエメラルドグリーンの光を煌々と放っている。駅前をぐるりと見回してみると、この一角だけ少し明かりの色合いが異なっているように感じる。「川崎ルフロン」が目につくのは、幻想的な明かりが唐突な印象を受けるからだろう。やけに明るすぎるのだ。
 西口にも新しい施設がある。こちらは2004年7月の完成。「ミューザ川崎シンフォニーホール」だ。駅の構内通路からアクセスできる作りになっている。本来、人気の少ない西口の一角を占める大型ビルで約2000名を収容するコンサートホールを擁する。西口は、開発の遅れている地域で夜になると闇に包まれる。しかし、この施設の一角だけが明るく光る。
 それらの光は、街に調和しきれていない。つまり、川崎という街が本来持っていたはずの「匂い」がそれら施設からは感じられないのだ。そんな施設が新しく川崎に登場し始めている。


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