『「死にがい」の現在』宮田清彦


5、関係性の維持としての「死」
 「自分らしさの維持」に加えて、死の恐怖をやわらげるための、もう一方にある方法は関係性の維持だ。同じく週刊朝日の記事「末期がん患者のメッセージを子供たちに ホスピス医が語る『命の授業』(2004年7月2日)は結論部分をこう締めている。「『人は誰かとつながっているから強くなれます。第一線から退いたとか、役立たずになったから、自分は生きる価値はないと思う人もいる。でも、家族や友人は、その人がいるだけでいい、生きているだけでいいと願っている。そんな、ささやかな人間関係がつらさを乗り越え、幸せを見いだす力になるんです』」。また、前述のオブラ掲載、竹下節子による記事「大切な人に旅立たれた時に 愛しているなら泣かないで」は、親しい者の死についてこう述べている。「人間存在の真実は、多分、関係性のなかにある。誰かと物理的にすぐ近くにいても無限の孤独や疎遠を感じることは誰でも覚えがあるだろう。逆に、たとえ死によって分かたれても寄り添って一体化することは可能なのだ。
 死によっていったん失われたように思える関係性は、実は再構築できる。死ぬ前の痛がったり、苦しんだりする姿や年老いて弱った姿など、ハードウェアである体に由来する負の部分は消えて、心のもっとも深い部分で紡いできた関係性の核がよみがえってくるのだ」。親しいものとの関係が恐怖を和らげ、そして、それは死後においても続いていく。ここでは、そういう認識が死の恐怖を和らげるものとして把握されている。

 そして、「自分らしさの維持」と「関係性を維持」することの重要性は、他の記事の中でも繰り返し表れて、時に両方混ざり合うような形で主張されていることが確認できる。この二点が、特徴的なものとして挙げられる。


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