『犯罪者の仮面を被らされた者たち Vol.2』遊佐春奈
この国では「不法滞在者」
法務省入国管理局の難民認定に携わっている職員は、難民申請手続き中であろうが入管法違反であれば、強制退去の対象にもなるし、収容もする、と断言していた(UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は難民申請者の収容を原則的に認めていない)。「難民申請者が不法就労で入管に収容されることもあるのでしょうか」と聞くと、「あります」。「申請の結果が出るのを待たずに収容したりもするのでしょうか」と聞くと、「退去強制手続きと難民認定手続きは別物ですので」。また断言された。それなら、なぜ申請者の就労を認めていないのだろうか。外務省からの保護費を受け取れる人が限られているにも関わらず、就労が認められていなければ、申請をするために日本で生活をすることも困難になる。就労したらしたで不法就労で収容される。そのことについて聞くと、「外務省が保護していますので」。だから保護費を受け取れる人は限られているんだってば。そう思っていると、こう説明を加えた。難民認定していない人に保護の必要はない、と。
そこで、ふと思い出した。人身取引防止について入管に質問した時に感じたこと(Vol.1)を。入管の仕事は外国人を入れるか、残すか、出すか。人身売買被害者であってもそれは同じ。ましてや難民認定されていない「単なる不法滞在者」に保護や働く権利なんて必要ない。例えそれが「難民認定される可能性がある」難民認定申請者であっても。
中には難民申請するやいなや収容される申請者もいる。申請をすること自体が収容の原因になってしまうので、収容を恐れて申請しない人、申請したけど取り下げる人も多いのだという。例えば、トルコ国籍クルド人の場合、2004年現在で483人が難民申請し、認定率は未だに0%(同じく2003年G7各国のトルコ出身難民認定率、カナダ66%、フランス(第一次審査)5.1%、ドイツ(同左)12.0%、イギリス(同左)3.3%、アメリカ(異議審査局)37.8%、イタリアは数字記載なし。フランス、ドイツでは異議審査の認定率は第一次審査より高い)。その内、現在も収容に耐えながら申請手続きを継続している数は減っているという。そのような潜在的な難民も、この国では不法滞在者。
2001年以降、99年12月の難民申請や退去強制手続きの進行により、「仮放免」の取り消しが相次いでいるという。3年以上に及ぶ長期収容や、妻子を残しての家族分離収容、来日したばかりの妻を1人残しての夫の収容なども。また、2003年10月、警視庁・東京都・法務省・東京入管による「不法滞在外国人半減キャンペーン」以降、摘発や仮放免の取り消し、長期無期限収容が相次いでいるそうだ。現在仮放免中のある難民申請者が、「いつ収容されるか分からない」と話していたことがあった。「1〜2年収容所。仮放免。その繰り返し」。祖国の迫害から逃れてきて日本でも迫害を受けているようなものだと話していた。仮放免者は毎月1回、仮放免手続きを更新しに入管に行かなくてはならない(居住地の県外に出る場合もいちいち申請が必要)。その際、入管は(入管法)違反調査を行い、違反者はそのまま収容する。難民認定に携わっている職員に「どういう理由で収容しているのですか」と聞くと、「入管法違反者と一般的に在留状況がよろしくない人」と答えた。「在留状況がよろしくない」と言われても、具体的にどういう人のことか分からない。例えば、「逃亡のおそれがある人とか」なんだそう。これはまた、曖昧な表現である。「逃亡のおそれ」なんかいくらでも捏造できるのではないか。実際、その難民申請者は日本に家族(妻と子)もいて逃亡のおそれがあるとは思えない。外務省からの保護費で生活しており、就労しているわけでもない。なのに、いつ収容されるか分からない毎日なのだそうだ。彼の家族や親戚は、18人がドイツ、8人がオーストラリアに逃亡して全員難民と認定されている。弟はオーストラリアで3年で国籍まで取れたのに、彼は10年経っても難民認定されていない。