『犯罪者の仮面を被らされた者たち Vol.2』遊佐春奈
3.境界線は誰が作ったか
ある非正規滞在者の話
これまで、人身売買の被害者や難民申請者がどういう状況にあるかを書いてきた。しかし、人身売買の被害者であるかどうか、難民であるかどうか、が問題なのではない。人身売買も難民も非正規滞在者の問題も、抱えている問題はみんな一緒なのだと思う。基本的には受け入れたくないという意識が根底にあるから、国際的に避難を浴びても、お茶をにごしたような解決方法しかできないのではないだろうか。
ここでは詳しく触れないが、受け入れをしないと言いつつも、実際は人手不足の中小企業や産業界からの要望で研修生として単純労働者を受け入れている。月々10万円の安月給な上、ピンハネ、耐えかねた研修生の逃亡などが問題になっている。また、1990年から日系ブラジル人やペルー人(約23万人)を受け入れるなど、その時々の都合に合わせて条件付で受け入れてはいる。しかし、受け入れる体制を整えていなかったため、義務教育を受ける年齢の外国人の子どもの20〜30%が学校に通っていないなどの問題がある。合法的には受け入れていないが、産業界の都合で、工場や建設などの分野で働いている非正規滞在の外国人も沢山いる(http://www.moj.go.jp/PRESS/040518-1/b10.html)。ここでは、実際受け入れないと言いながらも、需要があるがため非合法で受け入れている結果、彼らがどういう状況にあるか紹介したい。
バングラディッシュ出身のTさんは、日本に来て7年になる。観光ビザで韓国に入り、5年くらい働いた後、もっと稼げると言われていた日本へ船で不法入国した。なぜ不法入国したかは、「(日本は)ビザを取るのがめんどう」と言っていた。
最初は千葉の自動車部品会社で働き、ビザの件でクビになった。次に群馬の部品会社で働いていたとき、右手の中指切った。そう話しながら見せてくれた彼の指は、第一関節の辺りでざっくり切り落とされていた。2ヶ月病院に入院したが、会社からは一銭も金が出なかった。ある支援団体に相談に行って労災に入った。ケガをする前の2ヶ月分の給料(60万円)は、裁判しているが、未だに払われていない。現在は通院中で、その支援団体でボランティアをしている。
取材当時、「来年国に帰る」「日本、外国人に対して厳しいでしょ」「捕まると大変だから」と言っていた彼は、もう日本にいないかもしれない。