『犯罪者の仮面を被らされた者たち Vol.2』遊佐春奈

悪循環

 一方、マスメディアの外国人犯罪報道については、アムネスティ・インターナショナル日本がWeb上でこんなデータを報告している。日本人の犯罪の客観件数31万4015(1998年度前半に朝日新聞上で報道された件数を2倍にした数値)に対し、報道件数4826で報道率1.54。一方、外国人の犯罪の客観件数10248に対し、報道件数390で報道率3.81、対日本人比率2.56(参考:奈良大学社会学部間淵領吾「外国人犯罪」2001年6月12日)。
 「外国人による犯罪と比較した場合その1%を占めるに過ぎないにも関わらず、マスメディアが外国人犯罪を報道として取り上げる率が高いことが、明らかになっている。これは、『外国人ということ自体にニュース性がある』(旗手・箱石『来日外国人人権白書』明石書店、1997年、p322)。『外国人労働者あるいは外国人にかんする最近の報道のもうひとつの特徴は、外国人犯罪の問題をあまりにも誇張しすぎることである。たとえば、一つ犯罪事件が起きると、マスコミは事件そのものの報道よりも、<ドコドコ人が強盗><ナニナニ人が密輸>などの人目をひく見出しで飾り、外国人にたいする先入観を植えつけている』(百瀬宏・小倉充夫『現代国家と移民労働者』有信堂、1992年、p31)」(アムネスティ・インターナショナル日本(http://www.amnesty.or.jp/multiculture/f_crime.pdf))。
 「治安に関する世論調査」でもこんな結果が出ている。日本の治安に関心があるとする者(1698人)に治安に関心を持ったきっかけを聞いたところ、「テレビや新聞でよく取り上げられるから」を挙げた者の割合が83.9%と最も高かった。治安に関する情報の入手方法でも、「テレビ・ラジオ」を挙げた者の割合が95.7%と最も高く、以下、「新聞」(80.1%)、「家族や友人との会話など」(32.3%)、「自治体や自治会の広報」(18.1%)などの順になっている。
 この警察・入管とメディアの協同キャンペーンは日本人の外国人に対する意識に大きく影響してきた。国民の外国人に対する意識の変化がはっきりと見られる調査結果が出ている。内閣府の「人権擁護に関する世論調査」(2003年2月)で(http://www8.cao.go.jp/survey/h14/h14-jinken/images/zu21.gif)、外国人の人権擁護についての意見を聞いた。前回(1997年7月)の調査結果と比較すると、「日本国籍を持たない人でも、日本人と同じように人権を守るべきだ」(65.5%→54.0%)と答えた者の割合が低下し、「日本国籍を持たない人は日本人と同じような権利を持っていなくても仕方がない」(18.5%→21.8%)と答えた者の割合が上昇している。また、「外国人労働者受け入れに関する世論調査」(http://www8.cao.go.jp/survey/h16/h16-foreignerworker/images/zu15.gif)で、観光客として入国した外国人、外国人留学生などがホステスや作業員などとして働き、収入を得る事例が生じているが、このことについてどう思うか聞いた。前回(2000年11月)の調査結果と比較して見ると、「よくないことだ」(49.2%→70.7%)と答えた者の割合が上昇し、「よくないがやむを得ない」(40.4%→24.5%)と答えた者の割合が低下している。この結果は、ちょうど警察が不法滞在者一掃キャンペーンを張り出して、メディアも盛んに取り上げ出したのと連動している。
 そして、更に、これらの日本人の意識を参考にして政府は外国人労働者受け入れに関する政策を決定している。受け入れはしないという政府の方針、外国人犯罪増加のキャンペーン→メディアの反応→国民の意識調査の変化→政府の政策というような悪循環が出来上がっているようだ。
 不安の原因は相手をよく知らないからだと思う。私も彼らの現状を知るまではイメージだけが膨らんでいた。外国人ホステスがどんな状況にあるか、難民申請者がどのような生活をしているか、その他の非正規滞在者がどのような状況にあるか、普通に暮らしていたら知る機会がない。どうしても政府やメディアが発表している情報に頼らざるを得ない。インターネットがあるから、自分で探そうと思えば、ある程度の情報は手に入るかもしれない。しかし、非正規滞在者に実際会って話を聞く機会はそうあるものではない。だから、イメージが先行して不安も増す。
 それでも、人身売買被害者や難民申請者は被害や迫害など具体的な現状が見えやすいし、国際的に問題とされているから理解も得られやすいだろう。実際、支援団体が多く、メディアの露出度も高い。「悲劇のヒロイン」に仕立て上げられて登場することも多々ある。しかし、その度に何か変わっただろうか。取り上げられる度に入管批判が高まって、在留特別許可などが個別に出されたりする。ところが、非正規滞在者全体へのイメージが変わったわけではない。氷山の一角のヒロインには同情票が集まるけれど、それは一時的なもの。今回のケースは特別で、それ以外の「不法滞在者」は摘発すべきという意見は根強くある。それは、どちらも個別の事象であって全体を表しているわけではないにも関わらず、大げさに取り上げる報道にも原因があると思う。「悲劇のヒロイン」を取り上げる一方で、外国人の凶悪犯罪を大々的に取り上げる。時には同じ日の紙面を賑わしていることもある。すると、「あぁやっぱり外国人怖いよな」となってしまうのではないか。私自身もそれらの報道に触れていて混乱した。それがこのルポを書く大きな動機にもなった。

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