『犯罪者の仮面を被らされた者たち Vol.2』遊佐春奈
1.立ちはだかるのは需要の壁
フィリピンパブ
偶然にもその2日後、私は彼女たちの働く現場を目の当たりにすることになった。
西葛西の駅を降りるとすぐにいくつかの店が見える。フィリピンパブは亀戸などの総武線沿い、浦安・葛西など千葉エリアに多いらしい。さらに数分歩くと、目的の店の前に到着する。しかし、その店は閉店になっていた。つい2週間前までは普通に経営されていたらしいのだが。その店は入管の審査もパスした「優良店」だった。
入管と警察はフィリピンパブへの摘発行動を強化実施中だ。「優良店」とは自粛対応店のこと。つまり、次のような対応をしている店のことだ。フライングブッキング(タレントの不足などのため、契約と違う店に飛ばされること)のタレントを契約通りの店に戻す(あるいは強制送還)。ARB(アーティストレコードブック:芸能人登録手帳)、パスポートをタレント自身に携帯させる。招聘事業者全国連合会とフィリピン業界団体(CALEA)との間で「同伴をやめる。ショーの完全実施。守られない場合フィリピンからのOPA(海外パフォーミングアーティスト)を送らない」との合意を交わす。
その一方で開き直り店もある。このような無許可店はタレントのランナウェー(逃げ出した人)を受け入れている。つまり、より非合法な雇用が多く危険で、入管の手も届かない。「本来はこのような店の取り締まりに力を集中すべき」と、20年くらいフィリピンの移住労働者の支援に関わっているフィリップ佐々木先生は言う。そんな中、優良店ほど経営が悪化し、潰れていくそうだ。同伴禁止は店側にとってかなりの痛手なのだろう。同伴が禁止になって稼げなくなったから辞めていくエンターティナーたちも多いのだという。
そういえば、この日、フィリピンパブに来る前に行ったフィリピンレストランは、以前はペイバック(同伴の際、食事などに利用させてフィリピンパブ側から何割かもらう)対象の店だったそうだ。そのレストランのオーナーとその奥さんはいかにも元客とホステスだ。フィリピンパブの近くのホテル、カラオケ店、レストランなどは、ほとんど同伴で儲けていたのだそう。同伴禁止の痛手はこれらの店にも波及しているのだろうなと思う。
仕方なしに予定していた店と同じビルの他店に向かう。DAWN−Japan(フィリピンの女性移住労働者支援団体)のスタッフ、大学院生、フィリップ先生、テレビ局のディレクター、フィリピンの歴史研究家、近々NGOを設立しようとしている方、私、と職種もバラバラな上、極めて女性比率の高い、フィリピンパブの客として似つかわしくない奇妙な集団が、男1女2の3グループに別れて、いざ入店。