『犯罪者の仮面を被らされた者たち Vol.2』遊佐春奈
2.この国の基準
再び
「(支援金)今はもらえてません」
ひょんなことから数人の難民申請者に出会った。
「えっ、何でですか?」
「分かりません」
彼らは「こっちこそそれが知りたいよ」と言わんばかりに首を横に振った。
合法的な単純労働のビザの発給が多くの女性移住労働者に望まれているとは限らないと知ってから、私の脳はしばらくフリーズしていた。もう不法就労や単純労働者受け入れについて考えるのはやめようと思った。しかし、彼らに会って、思考停止していた私の脳が再起動することになる。
在留資格を持たない難民申請者には、就労は許されていない。その代わり、生活に困窮している申請者には、外務省から委託されている機関RHQ(難民事業本部)から限定的ではあるが補助金が支給されることになっている。4ヶ月毎更新で、12歳以上の大人は1人につき日額1500円、12歳未満の子ども1人につき日額750円の生活費支給に加え、必要に応じて住居支援が支給される。宿舎借料(限度額)は、単身者4万円、2人5万円、3人5万5000円、4人以上6万円。
2001年12ヶ月間の保護費受給者は433名(更新した申請者の数も含む。つまり、全員が更新し続けている申請者であれば、3分の1の人数ということになる。その可能性はないにしても、この数よりは少ないことが予想される)。1982年に難民受け入れを開始してから2001年までに難民認定不認定だった人が合計で1721人いる。その内、現在も日本にまだ滞在しており、難民不認定に対し異議申出をしている人の総数は、問い合わせたところ法務省入国管理局でも把握していなかった。それでも、@毎年、難民認定一次審査の難民不認定者の半数以上が一次難民不認定に係る意義申出をしている、A10年以上かけて5〜6回の異議申出をしている申請者もいる、B難民認定手続き関係訴訟の係属中の件数が過去5年間で各年5〜49件ある、などのことから考えると、かなりの数の申請者が現在も手続き中で日本に滞在していると考えられる。不認定者の中で、同じく2001年までの合計で、申請を取り下げた者が340名、異議申出で認定された者が7名いる。法務省入国管理局も外務省の手前、それほど多くの難民申請者を強制退去させてはいないであろう(入管側に問い合わせたがこれも把握していないとのこと)から、仮にそれらを引いた1374名が、現在も手続き中だと考えると、3割(全員が保護費支給申請を更新し続けている申請者だったら1割)ほどしか支給されていないことになる。
それでも在留資格のある人は就労できるから、もらわなくても何とか暮らせていける。同じく2001年までの合計で、人道配慮による在留が認められた者が219名いる。法務省入国管理局によると、ほとんどの難民申請者が申請時に在留資格を持っていないという。保護費受給者が在留資格のない申請者のみに支給されていたとしても、在留資格のない難民申請手続き中の1155人(2001年)の37%(全員が更新し続けている申請者だったら12%)ほどしか支給されていないことになる。支給されている人の中でも、保護費と住居費両方合わせてもらえていない人は、生活費か住居費どちらかを稼ぐために、就労せざるを得ない。つまり、在留資格のない者でも就労せざるを得ない状況にあるということだ。その上、理由なく補助金給付が打ち切られることがある。難民事業本部援護課の方は保護費打ち切りの理由を「法務省入国管理局の審査過程が終了すれば打ち切ります」と説明していたが、実際は異議申出で難民申請手続き継続中の人でも打ち切られている。