月刊文藝春秋2018年10月号掲載「新書時評」生原稿。 ****** AVと聞いてアダルトビデオしか連想できないようではアウトである。今やAVといえば自動運転車(Autonomous Vehicle)だ。 冷泉彰彦『自動運転「戦場」ルポ』朝日新書はIT企業やベンチャーも加わって展開されている熾烈なAV開発競争の最新報告。事故を起こすと人命に関わる自動車を自動運転する難しさを丁寧な取材で浮き彫り…
総覧系新書にみる意味とイメージの伝播
月刊文藝春秋2018年12月号掲載「新書時評」生原稿。NHK出版の担当者の方からお礼とともに「まさかマンチンと並ぶとは」とのお言葉をいただきました。 ********* 松本修『全国マン・チン分布考』インターナショナル新書の冒頭で紹介されるのは、二三年前にテレビ番組『探偵ナイトスクープ』宛に寄せられたハガキのエピソードだ。 当書主は当時二四歳。東京在住の彼女が京都の実家から送ってもらった饅頭を…
平成の三冊
月刊文藝春秋2019年1月号掲載「平成の三冊」生原稿です。他のメディアでも書いていますがそれぞれ違うのを選んでいるので、本当に本当の三冊を選ぶとしたらと聞かれそうですが、これは割と本音に近いセレクション。 ****** 人文、社会科学、文学の領域でそれぞれ個人的に印象に残っている三冊を選んでみた。 まず人文書では東浩紀『存在論的、郵便的』新潮社を挙げたい。著者は昭和末のニューアカブーム以来、沈…